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← メギドラオン。 それは極大の火力に他ならない。 単純な破壊力だけに絞って言えばリンボ自身の本来の宝具よりも数段上を行く。 龍脈の龍を経由してその身に会得した異世界の魔法。 蘆屋道満程の術師であれば、それを最上の形で扱いこなすなど朝飯前の茶飯事だった。 更に禍津日神・九頭竜新皇蘆屋道満として完成された素体をもってすれば尚の事。 結果として歓喜のままに解き放たれた最上の炎は屍山血河舞台の総てを焼き尽くし。 後に残された者達は、当然のように敗残者らしい姿を晒す憂き目に遭った。 「これはこれは」 アビゲイル・ウィリアムズは右腕を黒焦げの炭に変えられ。 新免武蔵は髪房を焼き飛ばされた上、炎の中に生存圏を捻出する為に多刀の半分以上を溶かさねばならなかった。 そして伏黒甚爾の損傷が一番重篤だ。 彼は左腕を肩口から消し飛ばされ、それだけに留まらず左胴全体に大火傷を被っていた。 如何に彼が天与呪縛のモンスターであると言えども、これは紛うことなき致命傷だった。 「皆様お揃いで、随分と見窄らしい姿になりましたな」 らしくもなく息を乱した姿に溜飲が下がったのかリンボは満足げに彼の、そして彼らの有様を嘲笑する。 一番被害の軽い武蔵でさえ二天一流の強みを大きく削ぎ落とされた形。 アビゲイルと甚爾は四肢を三肢に削がれ、後者に至っては生命活動の続行さえ危うい容態にまで追い込まれている始末。 無様。 神に弓引いた者達の顛末としては実に"らしい"体たらくではないか。 そう嗤うリンボだけが唯一無傷だった。 三人が負わせた手傷もダメージも、メギドラオンの神炎が晴れる頃にはその全てが消え失せてしまっていた。 「…大丈夫、二人とも」 「私は、なんとか。でも…」 アビゲイルの眼が甚爾を見やる。 甚爾は答えなかった。 それが逆に、どんな返事よりも雄弁に彼の現状を物語っている。 “…こりゃ駄目だな。流石に年貢の納め時らしい” 冷静に自分の容態を分析して判断を下す。 此処まで数秒足らず。 自分の肉体の事は嫌という程よく分かっている。 何が出来るのかも、何が出来ないのかも。 以上をもって伏黒甚爾は自分の末路を悟った。 “不味い仕事を受けちまったな。タダ働きの果てがこれじゃ全く割に合わねぇ” ほぼ間違いなく自分は此処で死ぬ。 反転術式なんて便利な物が使える筈もない。 マスター経由での治癒も見込めず、体内は主要な臓器が半分程焼損している有様だ。 今こうして生き長らえている事が奇跡と言っても決して大袈裟ではなかった。 “従っても歯向かっても、結局汚れ仕事やるような奴は長生き出来ねぇってか。…返す言葉もねぇな” あの時。 伏黒甚爾は、アイドルの少女を射殺した後――芽生えた違和感に逆らわなかった。 大人しく尻尾を巻いて逃げ帰った。 それでも結局こうして屍同然の姿を晒すに至っているのはどういう訳か。 問うまでもない。 そういう訳なのだ。 散々暗躍して来たツケか、どうやら往生際という奴が回ってきたらしい。 何か途轍もない幸運に恵まれて生き長らえる事が出来たとしても隻腕の猿など何の使い物にもなりはすまい。 つまり此処で自分は、ごくあっさりと詰んだ訳だ。 仕事人らしくひっそりと…呆気なく。 似合いの末路だ。 甚爾は満身創痍の体の可動域を確かめながら自嘲げに笑う。 とはいえこれで最後なら、もう後先考える必要もない。 最後に死に花咲かせてアビゲイルにバトンを渡せばそれで終いだ。 “化物退治の英雄になるつもりなんざ端からねえんだ。ド派手な英雄譚なんざ、持ってる奴らに任せとけばいい” 例えば、得体の知れない神に魅入られているガキだとか。 例えば、差し向けられた呪いも力も全部真っ向斬り伏せちまう剣客だとか。 華々しい勝利や首級はそれが似合う奴らに任せるのが絶対的にベターだ。 能無しの猿がやるべき仕事はその手伝いと後押し。 奴らが気持ちよく本懐果たせるように裏方仕事で敵を削り、死ぬ前に野郎の吠え面が見られればラッキーと。 そうまで考えた所で、 『猿では儂は殺せぬ。誅せぬ。一芸、一能、道具を用いようと知恵を使おうと、人の真似を超えませぬ』 『黄金ほどの衝撃もない。 雷光ほどの輝きもない。 火焔ほどの鋭さもない。 絡繰ほどの巧拙もない。 鬼女ほどの暴力には、些か足りない』 ――違和感。 自らの意思と相反して隻腕に力が籠もった。 その右腕を見下ろす視線は忘我。 次に浮かんだのは苦笑だった。 「俺も懲りねえな」 "違和感に逆らい続けると、ろくなことがない"。 結局の所猿は猿なのだろう。 然り。 この身に正義だの信念だのそんな大層な観念は今も昔も一度だって宿っちゃいない。 只強いだけの空洞。 そしてその空白を埋める物は、もう未来永劫現れる事はない。 自分も他人も尊ぶことない。 そういう生き方を選んだのだから。 そんな青を棲まわせる余地なぞ、この体に一片だってあるものか。 それは今も変わらない。 きっとこれからも。 何があろうとも――。 「フォーリナー」 リンボの五指は今や指揮棒だった 振るその度に呼吸のような天変地異が発現する光景は悪夢じみている。 地震。火災。雷霆に怪異の跳梁、束ねた神威を放てばそれは必滅の審判と化す。 傷口が炭化して血すら流れない欠けた体で地面を蹴り、それらをどうにか掻い潜りながら。 すれ違う僅か一瞬、甚爾はアビゲイルへと耳打ちをした。 「――――――」 少女の眼が見開かれる。 だめよ、と口が動いた気がした。 それに耳は貸さない。 伝えるべき事は伝えたと、猿は戦端へ戻っていく。 “しかし流石に坊さんだな。人の陥穽探しは得意分野か” 捨てられるものは残らず捨てた。 何だって贅肉と断じて屑籠へ放り込んだ。 それをとっとと焼き捨ててしまわなかったのが"あの時"の失敗。 だから今回は歯車たれと。 依頼人のオーダーを完璧にこなして座へ帰る、そういう役割に殉ずるべきだと。 そう決めていた。 今だってそのつもりだ。 なのに猿は何処までも愚かしく。 そして、何処までも人間だった。 ――後先がなくなった。 未来が一つに定まった。 後任は用意出来ている。 何より今この場を仕損じれば、その時点で仕事は失敗に終わるのが確定している状況。 そんな数々の理由が…言い訳が。 英雄が生前の偉業をなぞるが如くに。 術師殺しの男に、その愚行をなぞらせる。 「…さて」 右腕は問題なく動く。 両足の火傷も軽微だ。 内臓の損傷は重度。 失血で脳の回りは悪い。 何より片腕の欠損がパフォーマンスを著しく低下させている。 仕事人として、術師殺しとして片手落ちも良い所だ。 以上をもって伏黒甚爾は結論付ける。 ――問題ない。 「やるか」 悪神と化したリンボを討たずして仕事の続行は有り得ない。 ならばその為に今此処で死力を尽くそう。 この違和感に逆らって。 この衝動に従って。 甚爾は地を蹴った。 無形の魔震を斬り伏せながら吶喊する。 嘲笑うリンボへ獰猛に笑い返して、男は愚かのままに突き進んだ。 呪霊の海が這い出でる。 禍津日神の呪力によって無から湧き出す百鬼夜行。 それを切り払いながら進む甚爾の奮戦は隻腕とは思えない程に冴え渡っていたが、しかしそれは大局に何の影響も及ぼしていなかった。 「健気なものよ。これしきの芸当、今の儂には無限に行えるというのに」 夜行は攻め手の一つに過ぎない。 甚爾を嘲笑うように九頭竜の顎が開き、九乗まで威力を跳ね上げた魔震を炸裂させた。 アビゲイルが鍵剣を振るって空間をねじ曲げる。 そうして出来上がった脆弱点を武蔵が押し広げ、力任せにぶち破った。 だが足りない。 無茶をしても尚砕き切れなかった震動の余波が彼女達の体を容赦なく蹂躙する。 武蔵が血を吐いた。 アビゲイルが片膝を突いた。 されど休んでいる暇などない。 甘えた事を宣っていれば、足元から間欠泉宛らに噴き出した呪炎の泉に呑まれていただろう。 「チェルノボーグ、イツパパロトル」 二神が列び立って天元の桜を迎撃する。 暗黒と吸精が、女武蔵の体を弾丸のように弾き飛ばした。 彼らは次の瞬間にアビゲイルの喚んだ触手に呑み込まれ即席の牢獄へ囚えられたが、それも所詮は僅かな時間稼ぎにしかならない。 空に瞬く赫い、何処までも赫い太陽。 先刻三人が見た最強の魔法を嫌でも想起させるそれが弾ければ、地上はまたしても熱波の地獄に置き換わった。 「メギド」 メギドラオンに比べれば遥かに威力は落ちる。 だがそんな事、何の救いにもなりはしない。 最上に比べれば威力が幾許か落ちる。 ――だから何だというのだ。 「では十度程、連続で落としてみましょうか」 今のリンボが繰り出せばどんな術でも致命の威力を纏う。 ましてや格が低いという事は、即ち連射に耐える性能であるという事でもあり。 稚気のように言い放たれたその言葉は、彼女達に対する死刑宣告となって降り注いだ。 「絵画を楽しむ趣味は御座いませんでしたが。なかなかに愉しい物ですなぁ、絵筆で何か描くというのも」 この体を筆に、この力を絵具に。 自由気ままに絵を描く。 世界という名の白紙を塗り潰す。 そうして描き上げるのだ、色とりどりの地獄絵を。 地獄の業火より逃れ出んとする不遜者があれば直ちに罰を下そう。 羅刹王を超え髑髏烏帽子を卒業し、現世と地獄を永久に弄ぶ禍津日神と化したこの蘆屋道満の眼が黒い内は斯様な不遜なぞ許さない。 「このようになァ」 「あ、ぎ…!」 鍵を掴み立ち上がろうとした巫女の右足が吹き飛んだ。 リンボの放った呪詛が鏃となって無慈悲に罪人を誅する。 「如何ですか、アビゲイル・ウィリアムズ。純真故に怒る事すら正しく出来ない哀れな貴女」 全身の至る所に火傷を負い、酷い部分は炭となって崩れ始めているその様相は悲惨の一言に尽きる。 そんな彼女の姿にはこの状況でも尚何処か退廃的な美しさが宿っており、それを嬉々と感傷しながらリンボは綴る。 「主の仇を討つ事は愚か、彼女へ引導を渡したのと同じ攻撃で為す術なく膝を突かされる気分は。 是非とも、えぇ是非とも、この九頭竜新皇蘆屋道満へお聞かせ願いたい。それはさぞや芳しい蜜酒となりてこの身を潤すでしょうから」 「…とても痛くて、辛いわ。泣いてしまいそうになるくらい」 向けられるのは只管に思慮等とは無縁の悪意。 生傷に指をねじ込んで穿り返すような嗜虐。 それに対し滔々と漏らすアビゲイルの声にリンボは笑みを深めたが。 そんな彼に対して巫女は、鍵を杖によろよろと立ち上がりながら言う。 「可哀想な御坊さま。貴方は、私に怒ってほしいのね」 「ほう、これはまた面妖な事を仰る。 確かに、ええ確かに銀の鍵の巫女たる貴方が髪を振り乱し目を剥いて怒り狂う姿を見たくないと言えばそれは嘘になりますが」 ギョロリとリンボの眼が動いた。 「言うに事欠いてこの拙僧を哀れと評するとは…いやはや、異界の感性というのは解らぬ。 こうも満ち足り、満ち溢れて止まらないこの霊基が貴女には見えぬのですかな? 今まさにこの蘆屋道満は過去最高の法悦のままに君臨し、御身らの奮戦さえ喰らって地平線の果てへ漕ぎ出さんとしているというのに!」 「ええ。貴方はきっと…とても可哀想なひと。酷い言葉と、棘のような悪意で着込んでいるけれど……」 今のリンボは奈落の太陽そのものだ。 底のない黒を湛え、脈打ち肥え太る破滅の熱源。 既にその性質は赤色矮星と成って久しい。 彼はあるがまま思うがままに全てを呑み干すだろう。 まさに至福の絶頂。 哀れまれる理由等何もない。 「本当は…とても寂しいのね。 分かるわ。その気持ちを、私は何処かで知っているから」 巫女はそんな彼の逆鱗を、その指先で優しく撫でた。 「どれだけ手を伸ばしても届かない誰かに会うために歩き続ける。 星に手を伸ばすみたいに途方もない事だと知りながら、それでも諦められない何か。 頭のなかに強く、そう太陽みたいに焼き付いて消えない憧憬(ヒカリ)……」 …朧気に揺蕩う記憶が一つ、アビゲイルにはあった。 それはきっと"この"アビゲイルに起こった出来事ではない。 魂の原型が同じだから、存在が分かれる際に偶々流れ込んでしまっただけの記憶と想い。 ある少女の面影を探して、きっと今も宇宙の果てを旅しているのだろうもう一人の自分の記憶。 「だからお空を見上げているのでしょう。あなたは」 「――黙れ」 そんなものを抱えているから、アビゲイルはこうして悪逆無道の法師へと指摘の杭を打ち込む事が出来た。 昂るばかりであったリンボの声色が冷たく染まる。 絶対零度の声色の底に煮え滾る怒りの溶岩が波打っている。 その証拠に次の瞬間轟いた魔震は、先刻彼女と武蔵が二人がかりで抉じ開けた物より更に倍は上の威力を持って着弾した。 「ン、ンンンン、ンンンンンン…!」 それはまさに極大の災厄。 自分で生み出した呪符も百鬼夜行も全て鏖殺しながら、リンボは刃向かう全てを押し潰した。 立っている者は誰も居ない。 猿が倒れ。 巫女が吹き飛び。 剣豪でさえ地に臥せった。 「…いけない、いけない。神たるこの儂とした事が餓鬼の戯言に揺さぶられるとは」 誰一人禍津日神を止められない。 天を目指して飛翔する禍津の星を止められない。 力は衰えるどころか際限なく膨れ上がり、無限大の絶望として悪僧の形に凝集されている。 彼こそが地獄、その体現者。 この偽りの地上に地獄の根を下ろし。 いずれは世界の枠さえ飛び越えてありとあらゆる平行世界を悪意と虐殺の海に変えるのだと目論む邪悪の権化。 そんな彼の指先が天へと伸びた。 昏き陽の輝く空には鳥の一匹飛んでいない。雲の一つも流れていない。 孤独の――蠱毒の――お天道様が口を開けた。 白い歯と真っ赤な舌を覗かせながら、神に挑んで敗れた愚か者達を嗤っている。 「とはいえ今ので多少溜飲は下がりました。拙僧も暇ではありませんので、そろそろ幕を下ろすとしましょう」 そうだ。 これは太陽などではない。 斯様な悪意の塊が天に瞬いて全てを笑覧する豊穣の火であるものか。 彼男の真名(な)は悪霊左府。 かつて藤原顕光と呼ばれ、失意の内に悪霊へ堕ちた権力者の成れの果て。 蘆屋道満の盟友にして、彼の霊基に宿る三つ目の柱に他ならない。 「因縁よさらば。目覚めよ、昏き陽の君」 其処に収束していく呪力の桁は最早次元が違った。 単純な熱量でさえ先のメギドラオンを二段は上回る。 放たれたが最期、全てを消し去るに十分すぎる凶念怨念の核爆弾だ。 全ては終わる。 もの皆等しく敗れ去る。 「この忌まわしい縁の悉く平らげて、三千世界の果てまで続く大地獄の炉心と変えてくれよう――」 太陽が瞬くその一瞬。 リンボの高らかな勝利宣言が響き渡る中。 「ぞ……?」 …しかし彼はそこで見た。 視界の中、倒れた三人の中で誰よりも早く。 灼け千切れた体を動かして立ち上がった女の姿を、見た。 その姿は見る影もない程ボロボロだった。 勇ましく啖呵を切ってのけた時の清冽さは何処にもない。 死に体と呼んでもそう的外れではないだろう。 二天一流を特殊たらしめる多刀も今や二振りが残るのみ。 足を止めて死を受け入れても誰も責めないような、血と火傷に塗れた姿格好のままで。 それでもと、女武蔵は立ち上がっていた。 「――」 その姿を見る蘆屋道満。 惨め、無様。 悪足掻き、往生際悪い事この上なし。 罵る言葉なぞ幾つでも思い付くだろう醜態を前にしかし彼は沈黙している。 得意の嘲笑を口にするのも忘れて。 道満は――リンボは己が霊基の裡から浮上する光の記憶を思い出していた。 “…莫迦な。そんな事がある筈がない” 既視感。 本願破れて失墜し。 常世総ての命を殺し尽くすとそう決めた己の前に立ち塞がった男が、居た。 青臭くすらある喝破は子供の駄々とそう変わらなかったが。 それを良しとする神が笑い。 愚かしい程真っ直ぐなその男に、英雄に――剣を与えた。 あの光景と目の前の女侍の姿が重なる。 有り得ぬと。 布石も理屈も存在すまいと。 理性ではそう解っているのに何故か一笑に伏す事が出来ず、リンボは抜き放たれたその刀身を見つめ呟いていた。 「――神剣」 都牟狩、天叢雲剣、草那芸剣。 神が竜より引きずり出した都牟羽之太刀。 霊格では到底それらに及ぶべくもない。 禍津日神は愚か羅刹王にさえ遠く届かないだろう、桜の太刀。 それが何故ああも神々しく目映く見えるのか。 あれを神剣だなどと、何故己は称してしまったのか。 「…そう。貴方がそう思うのならきっとそうなんでしょうね、蘆屋道満」 「……否。否否否否否否否! 有り得ぬ! そんな弱い神剣がこの世に存在するものか! 世迷言を抜かすな新免武蔵ィ!」 「残念吐いた唾は飲めないわ。他でもない貴方自身が"そう"認識したんですもの。 うん、ちょっと安心しました。私、まだちゃんと貴方の敵であれてるみたいね」 これは神剣等ではない。 宿す神秘はたかが知れており。 神域に届くどころか一介の宝具にさえ及ばないだろう一刀に過ぎない。 だがリンボは先刻確かにこれに神の輝きを見た。 かつて己を滅ぼした、あの雷霆の如き光を。 悪を滅ぼしその企みを挫く――忌まわしい正義の輝きを見た。 「…銘を与えるなら"真打柳桜"。繰り返す者を殺す神剣」 勝算としてはそれで十分。 リンボの示した動揺が武蔵の背中を後押しする。 他の誰でもない彼自身がこの剣に神(ヒカリ)を見たのなら。 それこそは、これが目前の大悪を討ち果たし得る神剣なのだという何よりの証明だ。 たとえ贋作の写しなれど。 贋物が本物に必ずしも劣る、そんな道理は存在しない。 「――おまえを殺す剣よ、キャスター・リンボ!」 「ほざけェェエエエエエエ新免武蔵! 光の時、是迄! 疑似神核並列接続、暗黒太陽・臨界……!」 桜の太刀、煌めいて。 満開の桜に似た桃光が舞う。 見据えるのは空で嗤う暗黒の太陽。 地上全てを呪い殺すのだと豪語する奈落の妄執。 これは呪いだ。 これらは呪いだ。 改めて確信する。 こいつらが存在する限り、あの子達は笑えない。 あの二人が共に並んで笑い合う未来は決して来ない。 …それは。 爆ぜる太陽の猛威も恐れる事なく剣を握る理由として十分すぎた。 「伊舎那、大天象ォォ――!!」 「――狂乱怒濤、悪霊左府ゥゥッ!!」 光と闇が衝突する。 成立する筈もない鬩ぎ合い。 それでも。 負けられぬのだと、武蔵は臨む。 その眼に。 あらゆるモノを斬る天眼に。 桜の花弁が、灯って―― ◆ ◆ ◆ 必中、そして必殺。 古手梨花のみを殺す、古手梨花を確実に殺す領域。 時の止まった世界を駆ける弾丸、それは沙都子の先人に当たる女が駆使した運命の形だった。 人の身に生まれながら神を目指した愚かな女。 自分自身でもそう知りながら、しかし只の一度として諦める事のなかった先代の魔女。 今となっては彼女さえ沙都子の駒の一体でしかなかったが。 それでも梨花に勝つ為ならばこれが最良の形だろうと沙都子は確信していた。 上位の視点から異なるカケラを観測する術も持たぬ身で、百年に渡り黒猫を囚え続けた女。 彼女が振るった"絶対の運命"は後継の魔女、今は神を名乗る沙都子の手にもよく馴染んでくれた。 …止まった世界の中を弾丸が駆け。 そして古手梨花は為す術もなく撃ち抜かれた。 胸元から血が飛沫き、肉体を貫通した弾丸は彼方へ飛んでいく。 「チェックメイトですわ、梨花」 夜桜の血による超人化。 それも即死までは防げない。 梨花が頭と心臓への被弾だけは避けていたのがその証拠だ。 そんな解りやすい弱みを見落とす沙都子ではなかった。 部活とは、勝負とは相手の弱みを如何に見つけどう付け込むか。 仮に自分でなくとも、部活メンバーであるなら誰しも同じ答えに辿り着いただろうと沙都子は確信している。 「最後の部活…とても楽しかった。今はこれで終わりですけど、すぐに蘇らせますから安心してくださいまし」 決着は着いた。 役目を終えた領域が崩壊する。 それに伴って止まった時間も動き出した。 世界に熱と音が戻る。 心臓を破壊された梨花の体がぐらりと揺らぎ、地面へ吸い込まれるように倒れていき… 「――なってないわね、沙都子」 完全に崩れ落ちる寸前で、踏み止まった。 ――え。 沙都子の眼が驚愕に見開かれる。 演技でも何でもない。 本心からの驚きに彼女は目を瞠っていた。 馬鹿な。有り得ない。そんな筈はない。 弾丸は確実に命中していた――心臓を破壊した確信があった。 それに何十年分という体感時間を鍛錬に費やして技術を極めた自分がこの間合いで動かない的相手に外す訳がない。 じゃあ何故。 どうして。 答えが出る前に思考は中断された。 梨花の拳が、沙都子の呆けた顔面を真正面から殴り飛ばしたからだ。 「が、ぁッ…?!」 鼻血を噴き出して転がる。 只殴られただけだというのに、先刻刀で斬られた時よりも酷く痛く感じられた。 垂れ落ちる血を拭いながら立ち上がる沙都子の鋭い視線が梨花の顔を見据える。 「どう、して。どうして生きているんですの…! 私は外してなんかない、確実に貴女の心臓を撃ち抜いた筈ですのに!」 「さぁね。私にも…答えなんて解らない。所詮借り物の力だもの。小難しい理屈や因果なんて知らないわ」 そう言い放つ梨花の瞳には或る変化が生じていた。 桜の紋様が浮かび、発光しているのだ。 梨花にはこの現象の理屈は解らなかった。 しかしそんな彼女の裡に響く声がある。 『それは"開花"。夜桜(わたし)の血が極限まで体を強化したその時に花開く力』 …夜桜の血を宿した者は超人と化す。 これはその更に極奥の極意。 流れる血をまさに花開かせる事で可能となる正真の異能だ。 『元々兆候はあったけれど…まさか実戦で使えるまでに至るなんて。梨花ちゃんはつくづく夜桜(わたし)と相性がいいのね』 開花の覚醒は夜桜の力を数倍増しに強化する。 古手梨花は夜桜と成ってまだ数時間という日の浅さだが、しかし初代も驚く程の速度でこれを発動させる事に成功した。 北条沙都子が彼女に対して用いた絶対の運命――領域展開はまさに確殺の一手だった。 認めるしかない。 あれは梨花にとって本当にどうする事も出来ない詰みだった。 梨花もそれをすぐに悟った。 失われた記憶の断片が自分に告げてくる底知れない絶望の感情。 この運命からは逃げられないと、古手梨花の全てがそう語り掛けてきた。 「私は、こんな所で終われないと強く強く思っただけ」 「…ッ。そんな事で……そんな事で、私の運命を破れるわけが!」 「あら。私の通ったカケラを全部見てきた癖にそんな簡単な事も解らないの? 良いわ、改めて教えてあげる。運命なんてものはね、金魚すくいの網よりも簡単に打ち破れるものなのよ」 だとしても。 まだだ、と。 今際の際に梨花は詰みを回避する唯一の手段を捻出する事に成功した。 それが開花。 夜桜の血との完全同調。 簡単にとは行かなかったが。 それでも確かに古手梨花は、北条沙都子が繰り出した絶対の魔法を打ち破ってみせた。 「勝ち誇った顔をしないでくださいまし。たかが一度私の鼻を明かしたくらいでッ!」 「言われるまでもないわ。こっちもようやく温まってきた所なんだから」 これにて戦いは仕切り直し。 沙都子が銃を向け、梨花は切っ先を向ける。 『だけど気を付けて。その体は、開花の負担に耐え切れていない』 そんな事だろうと思っていた。 奇跡とはそう簡単に起こるものではない。 奇跡の魔女となる可能性を秘めた少女も、人の身では依然その偉業には届かないまま。 中途半端な希望は脳内に響く初代の声によって否定される。 『貴女の開花は"奇跡"。肉体の死を跳ね返す、本家本元の夜桜にさえ勝り得る異能』 生存の可能性がゼロでない限り、小数点の果てにある奇跡を手繰り寄せて自身の死を無効化する。 それこそが梨花の開花。 沙都子は絶対の魔女として急速に完成しつつあるが、神の因子を得た今の彼女でもまだ真なる絶対(ラムダデルタ)には程遠い。 だから彼女が扱う絶対の魔法には穴があった。 人間にとっては"無い"のと同義と言っていいだろう限りなくゼロに近い穴。 真なる奇跡(ベルンカステル)と袂を分かった梨花のそれもまた、沙都子と同様に穴を抱えていたが。 絶対のなり損ないと奇跡のなり損ないとでは本来あるべき相性の構図が反転する。 絶対の中に生まれた小数点以下極小の「もしも」を梨花の奇跡は必ず手繰り寄せる事が出来るのだ。 故に梨花は生を繋いだ。 しかしこんな、夜桜の血縁にさえ例がない程の芸当をやってのけた代償もまた甚大だった。 『二度目の開花で貴方は完全に枯れ落ちる。だから事実上、次はないと思っていい』 一度きりの奇跡。 まさに首の皮一枚繋いだ形という訳だ。 仮に沙都子がもう一度あれを使って来る事があればその時点で今度こそ梨花の敗北は確定。 断崖絶壁の縁に立たされたのを感じながら――それでも梨花は恐れなかった。 「行くわよ、沙都子」 「…来なさい、梨花!」 地を蹴って刀を振るう。 弾丸が脇腹を吹き飛ばすが気になどしない。 恐れず突っ込んだのは結果的に正解であった。 “力が、使えない…!?” 当惑したのは沙都子だ。 先刻まであれだけ漲っていた力が、急に肉体の裡から出て来なくなった。 消えた訳ではない。 確かに体内に溜まっている感覚がある。 なのに出力する事だけがどうやっても出来ない。 もう一度時を止めて撃ち殺せば済むだけだというその想定が、不測の事態の前に崩壊する。 ――沙都子は術師ではない。 だから当然知る筈もなかった。 領域の展開は確かに絶技。 生きて逃れる事は不可能に近い。 だが反面弱点も有る。 領域を展開して暫くの間は、必中化させて出力した術式が焼き切れるのだ。 従って今、沙都子は時を止められない。 黒猫殺しの魔弾を放つ事が出来ない…! “もう一度あれを使われたら、その時こそ私の負け” “もう一度あれを使えれば、私の勝利は確定する” ――最後の部活。 その制限時間が決まった。 北条沙都子の術式が回復するまで。 それが、この大勝負と大喧嘩のリミット。 梨花はそれまでに沙都子を倒さねばならず。 沙都子は、その刻限まで逃げ切れば勝ちが決まる。 有利なのは言わずもがな沙都子の方だ。 しかし彼女は、梨花から逃げ回る事を選ばなかった。 間近に迫る刀を躱す。 降臨者化を果たした体は完成度で決して夜桜に劣らない。 だからこそ梨花の斬撃を紙一重まで引き付けて躱し、その上で間近から頭部に向け銃弾の乱射を見舞うような芸当さえ可能だった。 梨花はこれを桜の花を出現させて受け止めさせ対処するが、先のお返しとばかりに沙都子の拳が鼻っ柱をへし折った。 次いで腹を蹴り飛ばされ、もんどり打って転がった所をまた銃撃の雨霰に曝される。 「は、はッ…! どうですの梨花ぁ……! 貴方が私に勝てるわけ、ないでしょうが!!」 「げほ、げほ…ッ。はぁ、はぁ……良いじゃない、そっちの方がずっとあんたらしいわよ沙都子。 神様気取りなんて全然似合わない。あんたはそうやって感情を剥き出しにして、生意気に向かってくるくらいが丁度いいのよ……!」 「その減らず口も…いつまで利いてられるか見ものですわね!」 群がる異界の羽虫を斬り飛ばし。 殺到する触手は斬りながら逃げて対処する。 湧き上がらせた桜の木々が触手を逆に絡め取って苗床に変えた。 異界のモノ…沙都子を蝕む冒涜的存在を片っ端から捕まえて殺す食虫花。 古手梨花は徹底的に、神としての北条沙都子を否定していく。 「そう――こんなの全然似合ってない。らしくないのよ、あんたが黒幕とか悪役とか!」 「私をこうしたのは梨花でしょうが!」 「解ってるわよそんな事! だから、引きずり下ろして同じ目線でもう一回話をしようとしてるんじゃない…!」 鉛弾が右腕を撃ち抜いた。 刀を握る力が拔ける。 知った事かと左手で沙都子を殴った。 沙都子の指が引き金から外れる。 知った事かと、沙都子も右手で梨花を殴る。 そうなると最早武器の存在すら彼女達の中から消えていく。 能力も武器もかなぐり捨てて。 二人は只、思いの丈をぶつけ合いながら殴り合っていた。 「そんなまどろっこしい事してられませんわ…! 私が勝って貴方を思い通りにすればいいだけの話じゃありませんの! 雛見沢を、私達を……私を捨てて何処かへ行こうとする梨花の言う事なんて信用出来る訳がありませんわ!」 沙都子が殴れば。 「うるさいわね、馬鹿! 捨てるだの何だのいちいち言う事が重いのよあんたは…!」 梨花も負けじと殴り返す。 容赦のない拳は肉を抉り骨をも砕く。 だが双方ともに、人間などとうに超えているのだ。 少女達は可憐さを維持したまま無骨な殴り合いに興じていく。 「外の世界に行きたい。今まで知らなかった景色を見たい。そう願う事が悪いなんて話は絶対にない!」 「貴女がそんなだから私がこうして祟りを下さなければいけないのでしょうが…! あんな監獄みたいな学園で、背中が痒くなるような連中に囲まれてちやほやされて暮らす未来。 それが……そんなものが、梨花の理想だったんですの? ねえ、答えて――答えなさいよッ!」 「そんな、わけ…ないでしょ――!」 そうだ、そんな訳はない。 憧れがなかったとは言わない。そういう世界に。 何しろ百年の日々は自分にとってそれこそ監獄だった。 雛見沢の古手梨花以外の何者にもなれない。 オヤシロさまの巫女。 古手家の忘れ形見。 村人みんなに愛される村のマスコット。 自分は只、そんな世界から一歩踏み出してみたかっただけ。 自分の事なんか誰も知らない世界で自由に生きてみたかった、それだけ。 そしてその横に…一つ屋根の下で一緒に暮らして来た親友が居てくれたらとそう思ったのだ。 「雛見沢症候群も安定して、何処にでも行けるようになった。 そんなあんたと一緒に外へ出て、色んな物を見てみたいと思った。 だからあんたを誘ったのよ。お山の大将になるのが目的だったなら、あんたみたいなお転婆連れてく訳ないじゃないッ」 「だったら…! 私とずっと二人で居れば良かったじゃありませんの! 梨花が一緒に居てくれたのなら、梨花さえ一緒に居てくれたら……! 私だって大嫌いでしょうがない勉強も、いけ好かないお嬢様気取りの連中も…我慢出来たかもしれませんのに!」 一際強い拳が打ち込まれて梨花が蹌踉めき後退する。 荒い息が口をついて出る。 夜桜の血を宿し、仮に一昼夜走り続けても疲れないだろう体になったにも関わらず酷く呼吸が苦しかった。 見ればそれは沙都子も同じのようだ。 「ッ…。それは、……本当に後悔してるわよ。誓って嘘じゃない」 理由や因果を求める等無粋が過ぎる。 彼女達は今、かつてない程に本気なのだ。 だから息も乱れる。汗も掻く。拳が痛くなるくらい力も込める。 「すれ違いがあったとかそんなのは体のいい言い訳に過ぎないわ。 …私はあの時、周りの連中を振り切ってでもあんたに会うべきだった。 ふて腐れてむくれたあんたの手を引っ掴んで側に居てやるべきだった。 病気が治って狂気が消えても、……あんたの心に残った傷までなくなった訳じゃないって事、忘れてた」 北条沙都子には傷がある。 人間誰しも心の傷くらいある。それは確かにそうだ。 でも沙都子のそれは常人と比にならない数と深さであると、梨花は知っている。 両親との不和とそれが生んだ悲しい惨劇。 叔母夫婦からの虐待。 兄への依存とその顛末。 村人からの冷遇。 全て解決した問題ではある。 過ぎ去った過去ではある。 だとしても…心に残った傷痕まで消える訳ではない。 その傷が雛見沢症候群なんて関係なく不意に疼き出す事も、きっとあるだろう。 それをかつての自分は見落としていた。 蔑ろにしていた、見ていなかった。 …それが古手梨花の"業"。 「――なにを、今更」 梨花の告白を聞いた沙都子は思わずそう口にした。 湧いて出た感情は怒りとやるせなさ。 後者は見せる訳にはいかないと。 そう思ったから唇を噛み締めて拳を握る。 そのまま梨花の横っ面に叩き付け殴り飛ばした。 「誰が…! 信じるって言うんですの、そんな言葉……!」 梨花は拳を返してこない。 されるがままだ。 地面に倒れたその胸へ馬乗りになって沙都子は拳を振り下ろした。 「何度繰り返しても、何度閉じ込めても! 私がどんなに工夫して殺しても甚振っても追い詰めても…! それでも最後の世界まで雛見沢の外を目指し続けたわからず屋の梨花! 必死に説得してどうにか心をへし折っても、きっかけ一つあればそうやってまた外の方を向いてしまう! そんな貴女の言う事なんて……! 何一つ信用出来ないんですのよ、馬鹿ぁッ!」 何度も何度も。 何度も何度も振り下ろす。 鼻が砕けて歯がへし折れる。 顎が砕けて目玉が潰れ、顔を顔として識別するのが不可能になっても沙都子はそれを続けた。 「私は…! 外の世界なんて一生知らないままで良かった!」 何が悲しくて大好きな雛見沢を捨てなければならない。 そうまでして見る価値があるのか、あんな世界に。 「外なんて大嫌い、勉強も都会も全部だいっキライ! 何処もかしこも排気ガス臭くて五月蝿くて暑くて…雛見沢の方がずっといい! 何が良いんだかさっぱり解らない甲高いだけの歌声をバカみたいな音量で流してありがたがってる神経もさっぱり解らない!」 井の中の蛙と呼ぶならそれでいい。 あの井の中には全てがあったから。 北条沙都子が幸福に生きていける全てが揃っていた。 「…私は!」 梨花も同じだとばかり思っていた。 そして今も、自分と同じになるべきだと思っている。 「私は……あの家であなたと一緒に居られたなら、只それだけで良かったのに!」 …それが北条沙都子の"業"。 此処に二人は互いの業をさらけ出した。 梨花の手が。 ずっと無抵抗だった彼女の手が動いて、沙都子の拳を受け止める。 次の瞬間沙都子は顔面へ走る衝撃によって吹き飛ばされた。 顔を再生させながら梨花が立ち上がる。 沙都子も呼応するように立ち上がった。 仕切り直しだ――梨花は再び刀を、沙都子は再び銃を握って相手に向ける。 「…ねえ、沙都子」 「…何ですの、梨花」 忌まわしい花だ。 視界にちらつく花弁を見て沙都子は思う。 桜は嫌いだ。 門出の季節をありがたがる気にはなれない。 "卒業"なんて誰がするものか。 この業は、これは、私のものだ。 誰にも渡さない。 一生、世界が終わったって抱え続けてやる。 「私が勝った時の罰ゲーム。今の内に言っておくわね」 そんな沙都子に梨花はこんな事を言った。 沙都子はそれを鼻で笑う。 負ける気などさらさらないのだ、何だっていい。 どんな罰ゲームだって受けてやるとそう不遜に示す。 「ボクは…もう一度、沙都子とやり直したいです」 「――――」 そんな沙都子の思考が止まった。 魔女としての言葉ではなく。 敢えて猫を被り、自分のよく知る"古手梨花"として話す彼女の言葉。 「外の世界への憧れはやっぱり捨てられません。 沙都子の言う通り、ボクは何度だって雛見沢という井戸の外を目指してしまう。 そしてボクの隣に沙都子が居て、二人で同じ景色を見る事が出来たらいい。そんな夢を見てしまうのです」 「…何、を。言って――話、聞いてませんでしたの? 私は……!」 「解っています。だからこれは沙都子にとっては罰ゲームなのですよ」 それはあまりにも愚直な言葉だった。 馬鹿げている。 何を聞いていたのかと思わず反論しそうになったが、罰ゲームの一語でそれを潰された。 理に適っているのがまた腹立たしい。 相手が嫌がる事でなくては罰にならないのだから。 「沙都子が勉強したくなるように、定期テストは毎回ボクら二人の部活にしましょう。 負けたら当然罰ゲーム。それなら沙都子だってちょっとはやる気が出ると思います」 「…付き合ってられませんわそんなの。毎回カンニングでクリアしてやりますわよ、面倒臭い」 「みー。沙都子はやる気になれば出来るタイプだと思うので、そこは実際にやってみて引き出していくしかないですね。 ちなみにボクの見立てじゃ沙都子は二回目くらいから真面目に勉強してくるようになる気がしますです。 部活で負けた罰ゲームを適当にこなすなんて、ボクが許しても魅ぃの部活精神が染み付いた沙都子自身が許せない筈なのですよ。にぱー☆」 「む、ッ…。見透かしたような事を言うのはおやめなさいませッ」 そんな未来は来ないと解っていてもついつい反応してしまう。 威嚇する犬のように声を荒げた沙都子に、梨花は微笑みながら問い掛けた。 「沙都子は、どうしますか?」 「……」 「ボクが負けたらその時は言った通りどれだけだって沙都子に付き合います。 それでも外を目指してしまったら、沙都子が頑張って止めてください。 何なら決して外に出られない…そんなカケラを作って閉じ込めたって構わないのですよ。 ボクに勝って先に進んだ沙都子ならきっとそういう事も出来るようになるでしょうし」 梨花の言う通り、きっと遠くない未来にはそんな事も可能になるだろう。 沙都子にはそもそもからして魔女となる素養が秘められている。 其処にリンボの工作と龍脈の力が合わされば、最早そう成らない方が難しい。 カケラを自由自在に渡り歩きはたまた自ら作り出し。 思うがままに神として振る舞える存在として"降臨"する事になる筈だ。 そう成れれば当然、可能である。 古手梨花を永遠に閉じ込めて飼い殺す封鎖された世界。 ガスが流れ込む事のない猫箱を作り出す事なぞ…朝飯前に違いない。 「私、は…」 自分自身そのつもりで居たのに。 今になってそれが何だかとても下らない考えのように思えて来るのは何故だろう。 梨花のあまりに場違いで暢気な言葉に毒気を抜かれてしまったのだろうか。 魔女の力。 神の力。 絶対の運命。 永遠の牢獄。 魅力に溢れて聞こえた筈の何もかもがつまらない漫画の、頭に入ってこない小難しい設定のように感じられてしまう。 「私は…梨花と雛見沢でずっと暮らしていたい。それだけで十分ですわ」 そうして北条沙都子は原初の願いに立ち返った。 此処にはもうエウアもリンボも関係ない。 願いは一つだったのだ。 其処にごてごてと付け足された色んな恐ろしげな言葉や大層な概念は全て自らを大きく見せる為の贅肉に過ぎなかった。 「ちゃんと罰ゲームでしょう? 梨花にとっては。 あの息苦しい学園にも、人混み蠢く東京にも出られないで私と一緒にずっと暮らすなんて」 「…みー。ボクは猫さんなので、沙都子の眼を盗んでお外ににゃーにゃーしちゃうかもしれないのですよ?」 「その時は首根っこ引っ掴んででも捕まえて連れ帰ってやりますわ。逃げ癖のある猫だなんて、ペットとしては面倒なことこの上ありませんけど」 一瞬の静寂が流れる。 それから少女達はどちらともなく笑った。 「――くす」 「……あはっ」 「どうして笑うのですか、沙都子。くす、くすくす……!」 「ふふっ、ふふふふ! 梨花の方こそおかしいですわよ、あははは……!」 もっと早くにこうしていればよかった。 そう思ったのは、果たしてどちらの方だったろう。 或いはどちらもだろうか。 答えは出ないまま刀と銃が向かい合う。 彼女達の部活が…終わる時が来た。 「ごめんなさいね、梨花」 沙都子が口を開く。 その笑みは何処か寂しげだった。 部活はいつだって全力勝負。 手を抜く事だけは絶対に許されない。 それが絶対不変の掟だ。 だから沙都子はこの瞬間も、自分に出来る全力で勝ちに行く。 「終わりですわ」 少女達が想いを交わし合っていた時間。 互いの罰ゲームを提示し合い、久方振りに通じ合って笑い合った時間。 その間に沙都子の勝利条件は満たされていた。 領域展開の後遺症。 術式が戻るまでのインターバル。 それはもうとうの昔に―― 「…梨花……」 名前を呼ぶ。 梨花は答えない。 体が動く事もない。 時は、既に止まっていた。 引き金が引かれる。 弾丸が発射される。 二度目の開花は死を意味し。 そして開花以外にこの死を逃れる手段はない。 ――たぁん。 長い大喧嘩を締め括るには些か軽すぎる、寂しい破裂音が響いた。 ◆ ◆ ◆ 「――莫迦な」 目を見開いて溢したのは悪僧だった。 美しき獣と称されたその視線は天空へと向けられている。 嘲笑う太陽は既に笑っていない。 代わりに響いているのは、消え逝く悪霊の断末魔であった。 「莫迦な――莫迦な莫迦な莫迦な莫迦なァッ!」 剣豪抜刀と暗黒太陽。 一閃と臨界が衝突した。 起こった事はそれだけだ。 その結果、嗤う太陽は中心から真っ二つに両断された。 文字通りの一刀両断。 それはまるでいつか、この女武蔵という因縁が自身に追い付いてきた時の光景を再演しているかのようで… 「偽りの…紛い物の神剣如きが何故呪詛の秘奥たる我が太陽へ届く!」 溶け落ちる太陽はリンボにとっての悪夢へと反転した。 最大の熱を灯して放った一撃を文字通りに斬り伏せられた彼の顔に最早不敵な笑みはない。 この有り得ざる事態に動揺して瞠目し、冷や汗を垂らしていた。 太陽を落とす花という不可思議を成就させた武蔵はそんなリンボへ凛と言い放つ。 「黒陽斬りしかと成し遂げた。此処からが本当の勝負よ、蘆屋道満…!」 「黙れェ! おのれおのれおのれおのれ新免武蔵! 我が覇道に付き纏う虫螻めがッ!」 駆ける武蔵を包むように闇色の球体が出現した。 それは一層だけには留まらない。 十、二十…百を超えてもまだ重なり続ける。 呪詛を用いて造った即席の牢獄だ。 彼程の術師になれば帳を下ろす技術を応用して此処までの芸当が出来る。 しかし相手は新免武蔵。 そう長い時間の足止めは不可能と誰よりリンボ自身がそう知っている。 急がねば――そう歯を軋らせた彼の左腕が、不意に切断されて宙を舞った。 「…ッ! 死に損ないめが、邪魔をするなァ!」 「憎まれっ子世に憚るって諺、お前の時代にはなかったのか?」 隻腕の伏黒甚爾が釈魂刀を用いて切り落としたのだ。 普段なら容易に再生可能な手傷だが、今この状況ではそちらへ余力を割く事すら惜しい。 暗黒太陽…悪霊左府はリンボの霊基を構成する一柱である。 以前にもリンボは武蔵によってこれを両断されていたが、今回のは宝具による破壊だ。 受けた痛手の度合いは以前のそれとは比べ物にならない程大きい。 「いい面じゃねぇか。似合ってるぜ、そっちの方が道満(オマエ)らしいよ」 不意打ちが終われば次は腰に結び付けていた游雲へ持ち帰る。 咄嗟に魔震を発生させ、羽虫を振り払うように甚爾を消し飛ばそうとしたが――この距離ならば彼の方が速い。 リンボの顔面に游雲が命中しその左半面が肉塊と化す。 あまりの衝撃に叩き伏せられたリンボが見上げたのは嘲笑する猿の顔だった。 「古今東西何処探しても安倍晴明の当て馬だもんなオマエ。ようやられ役、気分はどうだい」 「貴、様…! 山猿如きが軽々と奴の名を口にするでないわッ」 立ち上る呪詛が怒りのままに甚爾を覆う。 しかし既にその時、猿は其処に居ない。 片腕を失って尚彼の速度に翳りなし。 天与の暴君は依然として健在であった。 無茶の反動に耐え切れず游雲が千切れ飛ぶが、それすら好都合。 ギャリッ、ギャリッ、と耳触りな金属音を響かせて。 甚爾は折れた游雲同士をぶつけ合い擦れ合わせ、その折れた断面を鋭利な先端に加工。 綾模様の軌道を描いて飛来した無数の呪詛光の一つが腹を撃ち抜いたが気にも留めない。 痛みと吐血を無視して前へ踏み出す。 その上で棍から二槍へと仕立て直した特級呪具による刺突を高速で数十と見舞った。 「づ、ォ、おおおおォ……!」 如何なリンボでもこの間合いでは分が悪い。 相手はフィジカルギフテッド。 純粋な身体能力であれば禍津日神と化したリンボさえ未だに置き去る禪院の鬼子。 呪符による防御の隙間を縫った刺突が幾つも彼の肉体に穴を穿ち鮮血を飛散させた。 「急々如律――がッ!?」 「黙って死んでろ」 こめかみを貫かれれば脳漿が散る。 猿が神を貫いて惨たらしく染め上げていく冒涜の極みのような光景が此処にある。 一撃一撃は致命傷ではなく自己回復――甚爾の常識に照らして言うならば"反転術式"――を高度な次元で扱いこなせるリンボにとっては幾らでも巻き返しの利く傷であるのは確かにそうだ。 だが塵も積もれば山となるし、何より重ねて言うが状況が悪い。 左府を破壊された損害とそれに対する動揺。 それが自然と伏黒甚爾という敵の脅威度を跳ね上げていた。 猿と蔑んだ男に弄ばれ、蹂躙されるその屈辱は筆舌に尽くし難い。 リンボの顔に浮いた血管から血が噴出するのを彼は確かに見た。 「■■■■■■■■■■――!」 声にならない声で悪の偽神が咆哮する。 物理的な破壊力を伴って炸裂したそれが今度こそ甚爾を跳ね飛ばした。 すぐさま再び攻勢へ移ろうとする彼の姿を忌々しげに見つめつつ、リンボは武蔵を閉ざした牢獄に意識を向ける。 “そろそろ限界か…! しかし、ええしかし――今奴に暴れ回られては困る!” 今この瞬間においてもリンボは目前の誰よりも強い。 指先一つで天変地異を奏で、気紛れ一つで視界の全てを焼き飛ばせる悪神だ。 にも関わらず彼をこうまで焦らせているのは、ひとえに先刻経験した予想外の痛恨だった。 重なる――あの敗北と。 輝く正義の化身に。 星見台の魔術師に。 彼らの許へ集った猪口才な絡繰に。 何処かで笑うあの宿敵に。 完膚なきまでに敗れ去った記憶が脳裏を過ぎって止まらない。 そんな事は有り得ないと。 理性ではそう理解しているのに気付けば武蔵の"神剣"を恐れているのだ。 “恐るべしは新免武蔵! 忌まわしきは天元の花! よもやこの儂にまたも冷や汗を流させようとは…! しかし得心行った。奴を討ち果たすには最早禍津日神でさえ役者が足りぬ! 拙僧が持てる全ての力、全ての手段をもってして排除しなければ――!” 猿の跳梁等どうでもいい。 さしたる問題ではない。 武蔵さえ消し飛ばせれば、あんな雑兵はいつでも潰せる。 かくなる上はとリンボは瞑目。 修験者の瞑想にも似たらしからぬ静謐を宿しながら意識を芯の深へと潜らせ始める。 「天竺は霊鷲山の法道仙人が伝えし、仙術の大秘奥…!」 それは単純な攻撃の為にあらず。 疑似思想鍵紋を励起させ特権領域に接続する仙術の領分。 安倍晴明を超える為に用立てた技術の一つ。 かの平安京ではついぞ開帳する事叶わなかった秘中の秘。 反動は極大、この強化された霊基で漸く耐えられるかどうかという程の次元だが最早惜しんではいられない。 「特権領域・強制接――」 全てを終わらせるに足る切り札。 嬉々と解放へ踏み切らんとしたリンボ。 しかしその哄笑は途中で途切れた。 肉食獣の双眼が見開かれる。 彼の肉体は、触手によって内側から突き破られていた。 それは宛ら寄生虫の羽化。 宿主を喰らい尽くして蛆の如く溢れ出す小繭蜂を思わす惨劇。 「ぞ、…ォ、あ?」 片足を失った巫女が笑っていた。 その手に握られた鍵は妖しく瞬いている。 「貴、様」 リンボは勝ちに行こうとしていた。 此処で全てを決めるつもりでいた。 後の覇道に多少の影響が出る事は承知の上で、絶大な反動を背負ってでも目前の宿敵を屠り去るのだと腹を括った。 そうして始まったのが擬似思想鍵紋の励起とそれによる特権領域への接続。 只一つ彼の計画に陥穽があったとすれば、励起と接続という二つの手順を踏まねばならなかった事。 それでも十分に正真の天仙へも匹敵し得る驚異的な速度だったが、"彼女"にとってその隙は願ってもない好機であった。 「――巫女! 貴様ァァァァァァァァ!」 「大丈夫よ。抱きしめてあげるわ、御坊さま」 接続のラインに自らの神性を割り込ませた。 無論これは演算中の精密機械に砂を掛けるも同然の行為。 特権領域とリンボの疑似思想鍵紋を繋ぐ線は途切れ。 逆にアビゲイルが接続されているかのまつろわぬ神、その触腕が彼の体内へ流れ込む結果となった。 臓物をぶち撒け。 洪水のように吐血しながら絶叫するリンボ。 その姿に巫女は微笑み鍵を掲げる。 全てを終わらせる為、絞首台の魔女が腕を広げた。 「さようなら」 リンボの断末魔は単なる雑音以上の役目を持てない。 命乞いか、それとも悪態か。 定かではないままに処刑の抱擁は下され。 外なる神の触手が…かつて彼が求めた窮極の力が――悪意と妄執に狂乱した一人の法師を圧殺した。 …その筈だった。 だが――しかし。 血と臓物に塗れたリンボが。 血肉で汚れたその美貌が白い牙を覗かせた。 「これ、は…?」 途端に神の触腕が動きを止める。 巫女の笑みが翳る。 其処に浮かんだのは確かな動揺だった。 「…油断を」 それが、この処刑劇が半ばで遮られた事を他のどんな理屈よりも雄弁に物語っており。 「しましたねェエエエエエエエエエエアビゲイル・ウィリアムズ! ――――急々如律令! 喰らえい地獄界曼荼羅ッ!」 →
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わたし、圭ちゃんにとって、なんなのっ!! ねえ? 圭ちゃんにとって、わたしはなんなの……単なる、お友達なの? ねぇ、教えてよ!! 圭ちゃんにとって、わたしはなんなの!? 圭ちゃん、圭ちゃんの方から、わたしにキスしてくれたことないじゃないっ!! 圭ちゃんの方から、わたしを抱き締めてくれたことないじゃないっ!! わたし、圭ちゃんにいっぱい、アプローチしたのに……。 それでも圭ちゃんは気付いてくれなくて……。あの図書館でのことは、わたしの精一杯の勇気だったんだよ…… なのに、圭ちゃんは答えを出してくれなかった……。わたし、怖くなった。 もしかして、圭ちゃんは、わたしのことなんて、どうでもいいと思ってるんじゃないかって。 わたしは、だから怖くなった。『好き』って一言を、圭ちゃんに言えなくなった。だって、拒絶されたら怖いもんっ!! わたしの気持ちは、鬼隠し編の時から変わってない。だけど、圭ちゃんの気持ちは、わたしにはわからなかった。 わたしは、圭ちゃんとは撲殺の思い出しかもってない。だから、圭ちゃんとの新しい思い出を作ろうって、わたし、必死だった。 わたしも昔のわたしじゃなくて、新しい自分に変わろうって必死だった。圭ちゃんの好きな女の子になりたいって思った。 でも、どんなに頑張っても、圭ちゃんがわたしをどう思っているのかわからなかった……。わたし、こんなに圭ちゃんのことが好きなのに…… もしかしたら、わたしのこの想いは、圭ちゃんにとって迷惑なものなのかもしれない。 そんな風に、わたしは考えるようになってきた。だから、やっぱりわたしは圭ちゃんと友達でい続けようと思った。 圭ちゃんにとって、わたしってなんなのか……。それを考えるだけで、怖かったから。友達なら、こんな想いをしなくてもすむと思ったから…… わたし、このままでいいと思った……。わたし、このままでもいいと思ったのに…… でも、詩音達がバカップルになって、わたしは本当に一人ぼっちになって……。そしたら、このままじゃ嫌だっていう気持ちが湧いてきて……っ そして、やっぱりわたしは、圭ちゃんのことが忘れられないんだって思ったの。思いが抑えられなくなってきちゃって……っ だって圭ちゃんは、わたしの初恋の人なんだもの……。ずっと、ずっと好きだったんだもの…… わたしは……わたしは……っ。圭ちゃんのこと、わたし、鬼隠し編の頃から大好きだった。 だから鬼隠し編の頃、圭ちゃんに仲間じゃないって言われたとき、すっごく泣いたんだよ。すっごく泣いたんだから……っ。 でも、圭ちゃんとは笑顔で付き合いたいと思って。好きだったから、圭ちゃんにわたしの笑顔を覚えていて欲しかった。 そして、いつかまた、圭ちゃんと遊べるって思って……。 だからわたしは、圭ちゃんのお見舞いのあの時、精一杯の勇気を振り絞ったんだよ。 落書きしようと悪戯したよね。わたしにとっては、あれは精一杯の勇気だった。 もしかしたら、圭ちゃんともう遊ぶことはないかもしれない。でも、わたしはそうしても圭ちゃんが好きだった……。 圭ちゃんとの繋がりを消したくなかった……っ。だから、悪戯をしたんだよ。 あれは、圭ちゃんにとって、ささいな悪戯だったのかもしれないけど……。わたしにとっては、とても大切な悪戯だったの……っ たとえ嫌われても圭ちゃんとの関係を、唯一、繋げてくれる悪戯だったから……っ。 圭ちゃんがあの悪戯を受け入れられなかった時、わたしは本当に悲しかった。だから無言で殴られたんだよ……っ でも……。本当に長かった……。圭ちゃんとの再会までの時間は、わたしにとっては本当に長かった……。わたしは、一生懸命におはぎを作り続けた。 いつか、このお菓子が圭ちゃんの舌に届くんじゃないか、って…… でも、世界を経るにつれて、こんなことをしても、意味がないんじゃないかって思えてきた……。 だって、こんな小さなおはぎの味なんて、こんな大勢の人がいる世界で、圭ちゃんの舌にだけ届くなんてありえないもの……っ それでも、わたしはこのおはぎにすがるしかなかった……。あの悪戯にすがるしかなかった。 わたしにとっての、圭ちゃんとの接点。それは、このおはぎと、あの悪戯しかなかったから……っ そして、何度目のループのとき……、この世界に移ってきた時……。わたしの願いが、ようやく届いた…… 分校の教室で……。圭ちゃんが立っていた……。圭ちゃんは最初、わたしのことがわからなかったみたいだけど…… わたしには、すぐにわかった。心臓が張り裂けそうだった。心が……飛び出しそうだった。 そして、これが最後のチャンスなんだって思った。神様がくれた、最後のチャンスなんだって。 わたしの気持ちを圭ちゃんに伝える、神様からの最後のチャンスなんだ、って……っ だけど、圭ちゃんは、昔と一緒で、わたしの想いには全く気付いてくれなかった。だからわたしは、圭ちゃんに行動で知らせようと思った。わたしの想いを…… でも圭ちゃんにとって、わたしはいつまでも、学校の親友のままだった。わたしにとっては、精一杯の勇気だったのに……。 圭ちゃんはわたしのそんな心に、気付いてくれなかった……っ だから、わたしは怖くなったの……。もしかしたら、わたしのことを、圭ちゃんはなんとも思ってないんじゃないか……。だから、最後の賭けだった……っ 図書館での勉強会……。でも圭ちゃんはやっぱり、何もわたしに、示してくれなかった…… わたし、本当に怖くなって……。圭ちゃんの気持ちが、わからなくなって。だからこのまま、親友の関係でいいと思った…… でも、詩音達がバカップル化して…… ……わたしにだって、わかってた。圭ちゃんが、鬼隠し編の時とは違うってこと。 でも、わたしには鬼隠し編の時の圭ちゃんの思い出しかなかったんだもんっ。 悟史と詩音みたいに、症候群の治療中から今まで、ずっと一緒にいられたわけじゃなかったんだもんっ 圭ちゃんとの空白との時間……。それを取り戻そうと、わたしは必死だったんだよっ そして、わたしも変わろうと必死だった。過去のわたしじゃなく、あたらしいわたしになろうと必死だった そうすれば、圭ちゃんはわたしに振り向いてくれるんじゃないか……。 親友のわたしじゃなくて、新しいわたしなら。圭ちゃんは振り向いてくれるんじゃないか、って思ったの……っ だから、詩音のふりだってしたんだよっ。わたしも、変わろうって……っ。昔のわたしじゃなくて、新しい自分に変わろうって。 だけど、それでも圭ちゃんはわたしを見てくれなかった……っ。圭ちゃんは最後まで、わたしを見てくれなかった……っ 嫌いなら嫌いって、はっきり言ってよ……っ!! わたしに気のあるそぶりを見せないでよっ!! 今、ここで、わたしのことが好きなのか、答えてよぉ……っ そうしないとわたし、圭ちゃんのこと、いつまでも想い続けちゃうじゃない……っ!! 苦しいんだから……っ!! 想い続けているのは、とっても苦しいんだから……!!
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「はぁ…はぁ、はっ…、け、圭ちゃん…ごめんなさい…もう少しでいいですから…、はぁ…我慢して下さい…、お願い、お願いします」 身体が異常に火照っていた。 俺は、汗まみれの身体をやっぱり汗まみれの詩音の背中に擦り付けてしまいそうになりながら、必死で身体を支えた。 頭がクラクラする、それはきっと汗と詩音の身体から発せられている獣みたいな匂いのせいだと思った、いつもはとてもいい匂いがする詩音の身体が、今は動物みたいに野性的で官能的とも言える香りを発している。 背中がとても熱い、それはきっとこんなに可愛い女の子と、こんなにくっついてしまっているからで、それはきっと… ここが、こたつの、中、だからだ。 始まりは、冬の雛見沢だった。 雛見沢での初めての冬に、俺は悲しいまで惨敗を喫していた…。 身体が、まだまるで寒さに慣れなくて、家でも部活でも登下校中でも俺はただひたすらにがたがた震えているだけだった。 そんな俺を見かねた魅音は、俺にこういってくれたのだった。 うちにもう誰も使ってないこたつがあるから、よかったらもってく?、と。 俺は歓喜した、何故なら俺の部屋には暖房器具というものが無かったから。 しかし、折り悪くその日、魅音は用事が出来てしまって家を夜まで空けなくてはいけないらしい。 でも取りに来てくれるのは構わないよというので、雪がゴウゴウと降る中、俺は少し首をかしげながら魅音の家の物置に向かったら、そこにいたのは、こたつで蜜柑を食べながら、はろろーんと悪戯そうに頬笑む魅音の双子の妹だった。 そこからの事はあまりよくは憶えていない。 二人でいつも通りにじゃれあっていたと思っていたら、魅音の婆さんの声が聞こえてきて血相を変えた詩音に、こたつの中に引きずり込まれたのだった。 そして俺達は閉じ込められてしまったんだ、この、こたつに。 閉じ込められたというのは、どうも物置の中に置いてあった色んなものが、こたつの上や回りに雪崩の様に落ちてきたからの様だった。 というのは、俺達はこたつの中に埋もれきってしまってるから、外の様子がまるで分からないからで、俺は仰向けになった詩音の上に四つんばいを崩したような体勢で、もうずっと動けないでいる。 魅音の婆さんは、ひとしきり魅音を探すと諦めたのか、また何処かに行ってしまった。 それから二人で何とかここから抜け出そうとしてみたもののこたつは、まるでぴくりとも動きもせずに、布も何かに押さえつけられてるのか、全く動きそうも無かった。 問題はいくつもあった。 まずいくら冬とはいえ、こたつの中というのは、相当に熱くて俺達はお互い汗をだらだらだらだらとかきながら、半ば意識朦朧となりかけていた。 …そして、もう一つの問題は互い違いの体勢のせいで、俺は詩音の露になっている太腿と汗にまみれて透けそうになっている薄い緑色の下着を目の前にしている事だ。 それまで一度もそんな風にして見た事のないその場所は酷く肉感的だった。 俺が無理に四つんばいの体勢になっているのも、このせいだ、何もしないでいたら俺は詩音の大事な場所に顔を密着させてしまうのだから。 …俺だって年頃の男なんだから、本当はそうしてしまいたい、詩音の白い太腿に顔を埋めて、まるで変態みたいに大切な所に顔を近付けてみたい。 でも俺は男だから、そして詩音を何だかんだと言っても本当に大切な仲間だと思っていたから、逆にそんな事は絶対出来ないと思ったのだ。 詩音が言うには、魅音が帰ってくるのは夜の8時を回るらしい。 それまでまだまだ時間はあるのに、俺は無理な体勢がたたってフラフラとするぐらい、意識が朦朧とし始めていた。 幸い空気は、僅かな冷気と共に隙間から入ってきて、そのおかげで俺は、もうボロボロだけれど、何とか体勢を保てていた。 異変に気付いた、いや、気付かれてしまったのは詩音の方にだった。 「…圭ちゃん、もしかして……」 詩音の手の動きに気付けなかったのは、意識が朦朧としていたからとは言っても、やはり最悪のミスだった。 「圭ちゃん、あんた…いつからこんな…何でこんな無理してるんですかっ!」 詩音の手が俺の腰を触ると、俺は酷くヒリヒリした痛みと共に腰をびくんと震わせてしまった。 無理に四つんばいになっていたせいで、俺の腰と背中はこたつの発熱する部分にずっと当たってしまって、少しだけ火傷に近い状態になってしまっていたのだ。 詩音の指が、俺の腰をはい回る度に俺の身体はびくんびくんと震えてしまう。 「や、やめてくれ、詩音、大丈夫だから、本当に大丈夫だから、頼む、やめてくれよ…頼む」 …その時、俺は酷く哀れっぽい声を出していたと思う。 だってこのままでは気付かれてしまうと思ったから。 「…熱っ、ズボンの金具が…圭ちゃん、そんな事言ってる場合じゃないんです、自分で分かるでしょう…?」 そんなのは最初から分かってるんだよっ、と言いたくなるのを必死でこらえた。 でもそれよりも怖い事があるから…だからこうやって頼んでるんじゃねぇか…詩音…。 詩音が、俺のズボンに手をかけたのが分かった。 俺は必死に暴れた、今、そんな事されたら…俺はっ! 「やめろ、やめてくれっ、詩音っ、頼むから…」 「暴れないで下さいっ、暴れるなっ!前原圭一っ!…いいじゃないですか、どうせさっきから私のは見てるんですからお互い様です…、そういう事なんでしょう?」 そうだっ、そうなんだけど違う…、違うんだよ、詩音… 詩音は、中々外せない金具にイライラしている様だった。 ふいに詩音の手がズボンから離れた。 そして腰の後ろに回される。 ズボンに吐きかけられる詩音の吐息が少しだけ強まった気がした。 「やめろ…何して、詩音、何する、うっ…」 ジッパーが、少しだけ、開いた。 詩音の熱い息が、強くなった気がした。 く、口で、開けてる…? 俺は身をよじって、必死に拒絶しようとした。 なのに詩音は信じられないぐらい強い力で腰を抑えつけると、更にジッパーを開いていく。 「あ…あ…あ…あああ…」 もう間に合わない…。 身体から力が抜けていく。 気付かれてしまう、これだけは、隠しておきたかったのに…。 そして俺は、自分のこれ以上ないぐらい勃起してしまったものが、戒めを解かれて、柔らかい何かに触れたのを感じた、感じてしまった。 これ、詩音の…顔だ…。 それを考えてしまった瞬間、俺のソレはびくんと震えて、背中にぞくぞくするような快感が奔った。 俺はもう何も言えなかった。 自分を最低だと思った。 仲間だの何だの言いながら、下着を見ただけでこんなになってしまった、こんな状況で。 それだけならまだしも今、こうして詩音の顔に自分の汚いモノを擦り付けたと思っただけでこんなに気持ちいいと思ってしまっている。 …本当に、最低だ。 詩音が、何ていうのかが怖かった。 何となじられても仕方のない事をしているのに、やっぱりそれは怖かった。 怒られて、口を聞いてももらえなくなるんだろうか…、それとも気まずくなって段々と疎遠になってしまうんだろうか… とても、怖い。 ふいに背中に手を回されるのを感じた。 擦られるように優しく背中を撫でてくれている。 「…詩音?」 俺の声は少し震えていたと思う。 「…大丈夫ですよ、圭ちゃん、私は気にしません、だから圭ちゃんもそんなに気に咎めないで下さい」 その詩音の声は今まで聞いた事なかったぐらい、優しくてあたたかくて、俺は汗とも涙とも分からないものをぼろぼろと流した。 <続く>
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前回 鬼畜悟史~ソノザキシマイ~ 沙都子のにーにーを確認するだけなら学校でも済ませることができる。 しかし僕自身が聞いてもうまくはぐらかされる気もしたので、ここは詩音にいかせることにした。 詩音は沙都子に『ねーねー』として慕われているようだし、実際とても仲が良い。 もちろん終わったあとの詩音には『ご褒美』がある。 詩音は僕の話を聞くとすぐさま話を聞き入れ、沙都子に話しかけていた。 容易い。容易すぎる。このまま一日に一人のペースで落としていけば沙都子を含めてもあと3日で終わる。 あと3日が部活メンバー全員のタイムリミットなのだ。僕を傷付け、裏切った女たちを絶対に逃がしはしない。 たとえどんな事が起きても絶対に全員を喰らいつくし、僕の性奴隷にしてやる。 井の中の蛙は幸せでした 井戸の外に何も興味がなかったから 井の中の蛙は幸せでした 井戸の外で何があっても関係なかったから そしてあなたも幸せでした 井戸の外で何があったか知らなかったから Frederica Bernkastel ひ ぐ ら し のなく 頃 に ~ 鬼 畜悟史 ~ 第四話 ~にーにー~ 校舎裏に沙都子を呼び寄せ、率直に『にーにー』とはどちらを指すのか聞いてみた。 「詩音さんは何を言ってるのでございますの?にーにーはにーにーですわよ」 「じゃなくて、今の沙都子のにーにーっていうのは悟史君と圭ちゃんのどちらを指すのかってこと」 「それは……ん……えぇと……」 案の定、沙都子は悩みだした。 恐らく『にーにー』という言葉は両者に使っていたのでどちらかと聞かれても答えきれないと言った所だろうか。 「どっちですか?あ、両方というのは無しでお願いしますね」 「ぁぅぁぅぁぅぁぅ……」 困ってる困ってる♪あ~もう本当に可愛いな~。 これならレナさんがお持ち帰りしたくなる気持ちも分かる。 そんな事を考えていると沙都子が本当に小さく、ぼそっと、呟いた。 「圭一さんですわ……」 悟史君の予想が的中してしまった。 今の沙都子は恐らく圭ちゃんに恋をしているのだろう。しかし、流石に年齢差や圭ちゃんがレナさんを好きだと知っている事が告白に歯止めを掛けている状態。 そして、圭ちゃんを『にーにー』と呼ぶことでまるで恋人のような気分を擬似的に味わっている。 しかし例えそうであっても、沙都子には悟史君を嫌う要素なんていうのは無い筈だ。 仮にもかつては悟史君を『にーにー』だと呼んでいたのだ。その気持ちがすぐさま薄れることは無い。 やはり杞憂は杞憂のままだった。 私はそのまま踵を返し、その場を立ち去ろうとしたが沙都子が呼び止める。 「あの……詩音さん。少しお聞きしたいことがあるのですけど……」 「何ですか沙都子。遠慮せずにどんどん聞いちゃって構いませんよ」 沙都子はしばらく俯きながら何かを考えているようだった。 聞きたいんだけど、こんなこと聞いてもいいんだろうか? という心の声が丸分かりだ。 やっと決心した様子の沙都子。 しかし、その後続く沙都子の言葉は、私には全く予期できないものだったのだ。 「私のにーにーは……一体何を……詩音さんとやってらっしゃたんですの……?」 「何の話ですか沙都子?」 「私見てましたの。にーにーと詩音さんが裸で絡み合っていたのを」 え…………?私の身体が足のつま先から頭の先まで徐々に石化していくのが分かる……。 「一昨日でしたかしら。私はにーにーが詩音さんに家のお手伝いをして欲しいと頼んでいるのを耳にしましたの。 その時は、何故私も誘ってくれないのだろうと怒りましたわ。だけどすぐに考え直して、きっとにーにーは私に手を煩わせたくなくて言ってくれなかったのだと思いました。それでも私はにーにーの役に立ちたかった!だから……だから……!私は……にーにーを驚かせる意味も含めて、気づかれないように他の部屋から家の中に入りましたの!」 そ、そんな……。 まさか、沙都子が家の中にいるなんて考えもしなかった。 「私はにーにーを驚かせたかった!きっとにーにーは驚きながらも喜んでくれると思ってた!だから私はにーにーが居る部屋まで忍び寄って勢いよく開けようとしたんですの。そうしたら、中から詩音さんの声が聞こえてきましたわ。私は何の気もなしに襖を少し……少しだけ開けて、中を見てしまいましたの。そうしたら…………!」 沙都子は途中から涙目になりながらも『あの日』の出来事を語っていく その様子はとても見るに堪えないものだった。 「怖かったですわ!あんなにーにー見たこと無かった……!詩音さんだって!詩音さんはまるで洗脳されているみたいでしたわ。わたくしは襖の間からにーにーの顔を見ましたわ。詩音さんがにーにーに何かを誓ったときのにーにーの顔は、まるで悪魔のようだった!」 沙都子の言葉の一つ一つが私に突き刺さる。 私は何をやっていたのだろう。あんな悟史君が今まで好きだったのだろうか。 そんなはずは無い。私が好きな悟史君は……優しくて、でも心が強くて、私を心の中から暖かく包んでくれる太陽のような人だった。 なのに何処で、何処で悟史君は『悟史君』では無くなったのだろうか。 「詩音さんお願いです。あのにーにーはねーねーの理想の『にーにー』では無くなった。だからあのにーにーから別れてくれませんか。わたくしは決して意地悪で言ってる訳じゃないんですの。ただ、ねーねーが心配なんですの。このままいくとねーねーがどんなことをされるか分かりませんわ。だから……お願いですの……」 沙都子は私の痴態を見ても私をねーねーだと見てくれた。そして私を心から心配してくれている。 こんな沙都子を……私は……悟史君に売り渡そうとしていたなんて……! そっと沙都子の身体を抱きしめる。その身体は華奢で、こんな子にあんな心配をさせていた自分を殴り飛ばしたくなる。 今まであんなに好きだった悟史君を拒絶するのは辛かった筈なのに、この子は今まで全く辛さを見せなかった。 そして私はこの子の苦しみに気づけなかった! 「沙都子……!ごめんね……!!つらかったでしょう……!!」 「大丈夫ですわよ……。わたくし、耐えるのは慣れているんですのよ……」 私は涙が出てくるのを抑えることができなかった。 そしてそれを見て、沙都子も堰を切ったように涙が零れる。 私たちは抱き合いながら、しばらくの間二人で泣き続けていた……。 そして私たちは泣き終った後、二人で悟史君の心を元に戻す方法を探り合うことを誓い合い、 明日また興宮の図書館で会うことを約束して別れた。 けれども、今まで気づかなかった。 カラン…………。 空き缶が転がる音に私は、はっとする。 そう、私たちの他にさっきの話を聞いている人物の存在に気づかなかった。 そして気付いてしまった。 私の背後に悟史君が立っていることに。 ぞくり、と背筋が凍る音。 悟史君の鷹のような鋭く冷え切った眼光が私を射抜く。 「あ……ぁ……」 その眼光に射抜かれた私の心は既に悟史君に掴まれていた。 足がガクガクと震え、崩れ落ちる。 こんな悟史君を私は見たことが……無い。それは昭和57年に沙都子のことで喧嘩をしたときの比ではなかった。 そしてその首には血がわずかに見える。 悟史君の眼光は私にこう言っていた。コノ裏切リモノ、と。 謝る為の言葉さえも喉に突っかかって出てこない。 「悪い猫さんには躾が必要だね」 穏やかに、しかしその中に確実に怒りが混じった言葉。 悟史君が右手に握っていたバットに力が入る様子が見て取れる。 でも、恐怖で足が動かなかった。 私は……駄目かも知れない……。 沙都子、ごめんね その言葉を呟いたとき私は後ろから何かを背中に押さえつけられ……意識はそこでブラックアウトした。 「遅かったですわね。約束をしたほうが遅れるなんて無様にも程がありましてよ」 次の日。詩音さんと約束した通りに図書館で私たちは落ち合いました。 けれど遅れてきた詩音さんは体調が悪いのか少しフラフラしてる。 「どうかしましたの?なんだか凄く顔色が悪いように見えますけど」 「昨日は少し風邪を引いたみたいで。まだちょっと体調が優れないです」 「全く……。どうせこれからの事を考えていたら夜更かししてしまったんでしょう?今から二人で話すんですから そんなに考えなくても良かったのですのに」 詩音さんは本調子ではない様子。ここは私がしっかりしなければ! 「で、これからどうしますの?もしかしたらまたにーにーが雛見沢症候群を発病しているのかもしれませんから 一度監督の身体検査を受けさせるべきかも知れませんわね」 自分ひとりで今後のことについて詩音さんに話す。 でも、詩音さんはほとんど喋ってくれない。もしかしたらかなり詩音さんはきついのかもしれない。 「仕方ないですわね。今日はもうお開きにしますわ」 「え、沙都子?」 「今度来るときはもっと体調を整えてから来ることですわね」 今日はもう解散すると詩音さんに伝え、その場を立ち去ろうと思い詩音さんに背を向ける。 ばたん。 「………………?」 何の音?私の背中の後ろで何か変な音がした。 振り向くとそこには床に倒れた詩音さんの姿が。 「し、詩音さん!?」 急いで駆け寄り、身体を起こす。 しかし、私が駆け寄ったときもう一人駆け寄ってきた。 恐らく図書館の職員さんだろうと思ってその人物を見て…………。 「詩音!大丈夫かい詩音!」 なんとあのにーにーだったのだ。 にーにーがここに居る!?今日ここに来る事は二人だけの秘密だったはず! 一体何故にーにーが!? 「沙都子!」 呼びかけられ少し身体を震わせる。駄目だ。にーにーを私が怖がっていることを知られちゃ駄目だ。 それに、にーにーは本を読むのが好きだったじゃないか。だから本当にたまたまここに居るのかもしれない。 いつも通りの反応をするんだ。いつも通り。いつも通り……。 「何ですのにーにー!?」 「詩音を僕の家に運ぼうと思うから手伝ってくれ!」 にーにーの家……か。確かにここから近いし、部屋も多い。とりあえずにーにーの家で看病して監督に連絡するのが良いかもしれない。 けどあそこは『あの日』の行為を見たせいであまりいきたくなくなった。 でも今はそんなことを言ってられない緊急事態だ。 「よし!じゃあ行くよ!」 にーにーは詩音さんをお姫様抱っこして人目を気にせずに走る。 タクシーを呼びたかったけどお金が無くては仕方がないですし。 ふと、詩音さんのポケットの中にお金が入ってるんじゃないだろうかと思ったが そのときにはもうにーにーの家は近くだった。 詩音さんをお布団に寝かせ、額に水で濡れたタオルを被せる。 本当にどうしたのだろうか?大体、私の健康管理までしている詩音さんが自分の体調を悪くするなんて有り得ない。 一体何が……? 「詩音は大丈夫かな……?」 「詩音さんの事ですから明日にはケロってしているに違いありませんわ」 「そうだね……」 しばらく沈黙が場を支配する。私には『あの日』のせいでにーにーと話すことが思いつかなかった。 「ねぇ沙都子。ちょっと話があるんだけど」 「……なんですの?」 「沙都子はさ、一昨日僕と詩音のセックスを見てたよね?」 「え…………!?」 「誤魔化さなくてもいいんだ。あの時僕は気付いていたんだからね」 ばれていたみたいだ。では、にーにーはばれていることを承知の上で行為に及んでいたということ。 一体何のために? 「沙都子は今、僕のことを警戒しているよね。それは仕方ないと思う。誰だってあんなものを見れば僕を疑う」 「じゃあ……にーにーは何故、私に見せ付けていたんですの?」 するとにーにーは恥ずかしがりもせずさらっと言ってのけたのだ。 「沙都子にセックスの気持ちよさを伝えたかったんだよ」 躊躇いも何もなく、真面目にこんなことを言い出した。これじゃあ、私の方が恥ずかしくなってしまう。 「な……なんて破廉恥な事を……不潔ですわ!」 「破廉恥……?沙都子だっていつも言ってるじゃないか。早く大人になりたいってさ」 「確かに言ってますけど、それとこれとは話が違いますわよ!」 「何も違わないよ。大人はセックスをするんだ。だから沙都子にも早くできるようになってほしいんだよ」 あのにーにーがこんな破廉恥な人だったなんて……。男の人っていうのはみんなこんな感じなんだろうか。 でも、一昨日の詩音さんだってかなり気持ち良さそうな顔をしてらしたし……。 圭一さんだってロシア系AVなんて物を見てるらしいですし……。 「それでね、僕は思ったんだ。最近沙都子は身体的に成長してるし、そろそろ僕がセックスがどんなものか 教えたほうがいいかなってね」 「セ……セックス……ですの……?」 「ああ。嫌なら別にいいんだ。でも、沙都子だって早く大人になりたいよね?」 「それは……そうですけど」 「じゃあ練習しようか」 「……うぅ」 にーにーは早速ベッドやらなんやらの準備を始める。観念しよう。 今日はとりあえずにーにーに教えてもらおう。 「あの……にーにー、優しく……お願いしますわね」 「うん、分かってるよ。沙都子は僕の妹なんだから」 そう。沙都子は僕の唯一の肉親なんだから……ゆっくり、じっくり、調教してやるよ……! 「じゃあ、まずキスから行こうか」 「うぐぅ……」 「大丈夫だよ。何も怖くないし、僕に身を委ねてくれればいい」 まず、羞恥心に染まる妹の唇を奪う。年端もいかない少女━━しかも妹━━の唇は柔らかい。 「ふむぅ……む……はふぅ…」 最初はただ唇を合わせるだけのキス。そして徐々に激しく。 小さな舌を絡めとリ、僕の唾液を沙都子に塗り、沙都子の舌の裏を舐め、歯茎をなぞり、下唇を吸い上げる。妹は息づかいを荒くし、ファースト・キスをただただ味わっていた。その顔がたまらなく可愛くて僕はさらに舐め回す。 ぴちゅ、ちゅ、ぴちゃ…… 響き渡る音で、さらに沙都子は赤面する。耳だって真っ赤でまるで沙都子が沸騰したようだった。 その初々しい反応が僕をさらにたきつける。一切の抵抗を許さないように、さらに沙都子の口内を侵食した。 「はむぅ、うん、んん……!」 あらかた舐めてから沙都子に聞く。 「どう?気持ちよかった?」 「……すごく……変な気持ちでしたわ。これを…気持ちいいって言うんでしょうか……? それに、身体がこう……何かを求めるんですの……」 何かって?アレしかないだろう!だがまだ前戯が終わってない。終わったらたっぷりとその身体にアレを埋め込んでやる。 「よし、じゃあ次のステップに移ろうか」 「次は何ですの?」 「胸だよ、沙都子」 沙都子のボタンに手を掛け、全て外すとそこからは少し膨らんだ胸が出てくる。 ……ってか、おい。ノーブラだと?男を誘っているのか? まぁ、ブラジャーを外す手間が省けた。それに沙都子の乳首を早く見られたことでよしとしよう。 「沙都子は胸を大きくしたい?」 「もちろんですわ。大人の女の人はみんな大きいんですもの」 「じゃあ、胸は揉まれると大きくなるって知ってた?」 「そ、そうなんですの?じゃ、じゃあ、揉んで下さるかしら」 揉んでくださるかしら、だとさ。……も、萌える!赤面しつつも 『勘違いしないことですわ。胸が大きくなるから揉んで欲しいんですの!決して気持ち良いからなんて理由ではありませんわ!』 という感じのツンデレっぷりに萌え死んでしまう!しかも妹属性付きの上、(似非)お嬢様言葉という特殊能力付き!? これはもう喰ってしまうほかあるまい!ではさっそく……! 「ひゃあ!にーにー、そんなに激しく……きゃう!」 我慢できなくなった僕は、いきなり沙都子の乳首をしゃぶる。 まるで赤ん坊のように力の加減を忘れ、しゃぶりつつも余った手で沙都子の両胸を揉んでやる。しかしこれはこれでいい。 沙都子は胸を大きくしたがっているが、無理に大きくする必要を感じなかった。小さいものには小さいものなりの良さがあるようだ。 「あぅ……んっ、んぁ!これが…気持ちいいって事ですのね……」 やっと自覚し始めた沙都子に追い討ちをかけるように、今度は沙都子の乳房を舐めてやる。 乳房を、乳輪を、乳首を……。あらゆるところを舐め、沙都子に快感を蓄積させていく。 いつの間にか硬く尖った乳首を引っ張り、押しつぶし、吸い上げる。乳首を傷つけないように軽く噛み、舌で硬い乳首を転がしてやる。 すると沙都子は僕のあらゆる責めに色っぽい声をだして反応する。 胸を重点的に責められたせいかもしれないが、どうやら沙都子は胸が弱いようだ。これからのためにも記憶しておかなくては。 最後に強く乳首を吸い、唾液で濡れた乳首に息をふっと吹きかける。 「ふあぁぁぁぁ!」 沙都子はいきなりの温度差を伴う責めに対して過剰に反応してくれた。 よし。沙都子は既に出来上がっているようだ。これなら……。 「やぁ!」 沙都子のわずかな抵抗は無視して沙都子のズボンを下げると、やはりパンツには大きなシミが出来ていた。 そのシミの中心を布の上から強くなぞって見る。 「はぁ!ああふぅ!ひぅぅ!」 感度は十分。さて、妹の未開の地でも開拓するか。 沙都子のパンツを脱がせ、本人でさえも触らなかったスジが僕の前に披露される。 ……これが我が妹のスジなのか……。まだ毛も生えてない、とても小さな入り口を手で開き視姦するように凝視する。 そこからは愛液が溢れており、とても綺麗なピンク色をしていた。 ━━━そろそろ本気でヤるか。少し浮かれすぎて本来の目的を忘れかけていたようだ。 「魅音。起きろ」 僕は隣で寝ている「詩音」に話しかける。 「へ?そこにいるのは詩音さんですわよ?」 すぐに「詩音」は目を覚ました。そして、起きあがるとすぐに「詩音」の服を脱いでいく。 「詩音……さん……ですわよね……?」 そこにいる「詩音」は答えない。身に着けていたもの全てを脱ぎ終わると「詩音」のスカートの中に入っていたゴムバンドを取り出し それを自らの髪の毛に縛り付ける。何所からどう見てもその姿は「園崎魅音」だった。そして、その人物は遂に口を開く。 「いや~!私もそろそろ我慢できなかったんだよね!悟史……この子、頂いて良いんでしょ?」 「あぁ。僕の邪魔にならない程度なら沙都子は好きにしてかまわないぞ」 沙都子はこの状況に対応できていない。しかし、本能的に身の危険は感じているようだ。 だがその身体は僕にがっちり捕まえられていて動けない。 「にーにー……?これはどういうことですの?何故魅音さんがここにいらっしゃるんですの?」 全ては昨日計画されたことだった。 昨日僕はそれとなく沙都子と詩音の後を付けていった。当初目論見は達成されたように思えたのだが事態は予想外の方向性を見せる。 なんと沙都子が僕と詩音の性行を目撃してしまっていたのだ。あのときは確かに無防備だったかもしれない。 その上、沙都子は詩音に僕と離れることを勧め、それに詩音が賛成してしまった。 『にーにーがにーにーでなくなった』だと? 妹の分際で何をほざいている!お前は僕の疫病神でしかなかったのに、お前は何様なんだ!? そして詩音も。家畜が主人を裏切るなどあってはならない行為。家畜風情が……! 突然首が痒くなってきた。でも精神は限りなくクールだ。 あいつらは僕に逆らおうとしている。すぐに×しなければ。あぁ、痒い痒い痒い痒い痒い! 僕は詩音が沙都子と別れたあと、詩音の後ろから近寄る。 詩音は何かに気付き、僕を見て、そして跪いた。ゆっくりと近づく僕の手にはいつの間にかバットが収められていた。 その目だ。その目。自分より立場の強いものに怯える目。恐怖が織り交じったその顔。その顔をこのバットで殴りつければ その顔はひしゃげるのだろうか。そしてその身体から暖かい朱い水が溢れ出て来るのだろうか。 だが、僕がバットを振り下ろす寸前に詩音の背中からバチッ、っと音がして詩音が倒れる。 {詩音の後ろに立っていたのは果たして魅音だった。倒れた詩音を二人でじっと見つめる。 「この子、どうすればいい?」 「じゃあ地下拷問部屋でこいつを調教してやってくれ」 必要最低限な会話で終わらせる。そして帰ろうとしたときに思いついたのが今回の作戦だった。 魅音が詩音になりすまし、病気を偽り僕の家に連れてくる。最近沙都子は僕を避けている節があったので好都合だった。 そして、現在に至るわけだ。 「にーにー、離してくださいませ!こんなの……!」 「大丈夫だよ沙都子。悟史と一緒に気持ちよくなろうね……」 魅音に沙都子を押さえつけてもらった僕は、ついに沙都子のスジに手を伸ばしたのだった。 <続く> 鬼畜悟史~ペット~
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厚手の布、豪勢なフリルとレース、それでいて華美すぎないどこか禁欲的な感じさえする服。 メイド服を着た人物がベッドに座っているのを鏡で見る。似合わない。 見ていたくなくて視線を再びスカートに落とす。縫製の良い物だ。 生地も良い。レースも下品にならない程度に付いている。 その裾から覗く自分の足をたどる。 細いが女性らしさとはほど遠いその足に、入江はため息をついた。 この足がもう少し柔らかであれば…何度そう思った事だろうか。 黒いソックスに包まれたふくらはぎにそっと触れる。 足だけでない、腕も、胸も、女性らしい柔らかさからはかけ離れている。 この体が女性の様であれば…幼い頃から何度思っただろう、悔いただろう。 その度に自分の体を見てため息をつき、時には涙したのだった。 似合わない。似合っていない。 鏡の中に写る自分を横目で見てもう一度ため息をついた。 顔立ちは整っていて女性的な優しさをたたえているし、 色素の薄い髪の毛が流れるうなじや指先や繊細さは間違いなく女性の物なのだが その体つきは女性の物である。と断言できるほど柔らかではない。 例えばこの胸。 豪勢なフリルに飾られた別珍の生地を撫でる。 膨らみのない平らな胸ではこの服は似合わない。 例えば鷹野の様に豊かな胸を禁欲的なこの衣装に隠すから良いのであって、 入江の膨らみのない胸では全く、滑稽ですらある。 生地の感触を楽しむように胸元に手を這わせる。 平らな胸ではあるが布越しに胸の突起が感じられる。 足に逆の手を這わせる。 女性らしい柔らかい曲線とは違う筋張った足。 黒いソックスに包まれてはいるが女性らしさは感じられない。 昔から、昔からこうだった。 骨と筋、手に伝わる感覚も柔らかい物ではない。 子供の頃から痩せ気味だった。食べても太らない体質なのだろうか、 羨ましがる女友達の豊かな体のラインをこっそり隠し見た学生時代の記憶が読みがえって来た。 太股も余り肉がない。筋っぽくガーターベルトが不釣り合いだ。 その奥、唯一自分が女性である証拠の器官に触れるとそこは既に潤っている様だった。 どうしてこうなのだろう。何度女性らしくなりたいと思ったか。 豊かな乳房や柔らかな尻に憧れ、その都度涙してきた。 女性らしくない自分を嫌い男らしく振る舞い研究に精を出した。 研究の分野では研究内容が重視され、自分の性別など誰も気にせず居心地が良かった。 もう、誰にも女性として見て欲しいと思わない様になっていた。 高ぶる熱は時々こうして自分で処理すれば良いのだから。 下着の上から濡れそぼった秘所をまさぐる。 滑りを使い秘裂に指を沿わせその奥を浅く抉る。 皮を上げ敏感な突起に触れると愛液がまたあふれ出した。 胸元のボタンを空けささやかな膨らみの上にある淡い色の乳首に触れると甘いしびれが走る。 幼女の未発達な胸の様な入江の乳首は酷く敏感だった。 診察用のベッドに座り、メイド服を着て自慰に耽っている己の姿を思うとまた一段と滑りが増した。 誰もいない深夜の診察所で淫猥な行為にふける自分。村の人間は想像しないだろう。 それ以前に皆自分を男だと思っているに違いない。 その自分がメイド服に身を包み患者用の寝台で自慰をしている興奮。 背徳感とも言える感覚に快感が増す。 「…っく…あ、ふ…」 食いしばっていた口元から吐息が漏れる。息が熱い。 右手で胸元をまさぐり、左手で秘裂を抉る。 人差し指でクリトリスを下からつつく様に刺激し、中指と薬指でぬかるんだ秘裂を擦る。 あふれ出した愛液を掬い肉の隙間にそっと指を進める。 第一関節まで差し入れると中は熱く濡れていて掻き回しても抵抗はない。 もう一本、指を差し入れ浅い位置で掻き回すと下半身に血が集まったような切ない感覚になる。 入江は我慢できなくなり胸を触っていた手を下に伸ばす。 もうスカートは乱れ、ガーターベルトと品のいい黒いストッキングに飾られた太股の辺りまで下着も下ろされていた。 「んっ…あっ…こんな…もう…っ」 堅く目を瞑り己の体だけに意識を集中させる。 刺激を与え続けたクリトリスは堅く勃起し、触れるだけで体が高ぶる。 胎内に二本の指を深く突き入れ限界はもうそこまで来ていた。 強い刺激を与えると切なくなり半身を起こしているのも辛くなる。 両手を太股で挟むように足に力を入れ胎内を抉り肉芽を抓む指に力を入れ、 絶頂はもうそこまで来ていた。 寝台の上で正座する様に座り、熱くなった体を絶頂に追いやる様に一気に責め立てる。 「あっ……っ…んっ…っ」 細い喉を逸らせ堅く目を瞑った。絶頂を迎えたのだ 体が少し震え、それから力が抜けた。 息を整え、酷く敏感になった体からのろのろと指を抜くと両の手ともぬらぬらとした液体で濡れそぼっていた。 ため息をつく。何だか分からないが罪悪感と、酷い虚脱感があった。 軽く頭を振り、シャワーでも浴びようと思考を切り替える。 「あら、もういいんですか、入江先生」 鷹野が扉の枠にもたれ掛かるようにして立っていた。 ねっとりとした視線が絡みつく。いつもの白衣に身を包んだ姿は美しかったが、 いつからいたのか、腕組みをして婉然と笑う様を入江は恐ろしいと感じた。 「勝手に入ってしまってすみません。何度も声かけたんですけど、夢中だったみたいで」 「た、鷹野さん…」 情けない事に声が上擦っていた。 そうだろう。誰だって自慰の現場を見られれば動揺する。 それが恋人や親しい者ならまだしも相手は同僚だ。それにここは診療所である。 診療所、そう何故今ここに鷹野がいるのだろうか。 「鷹野さんは、何故こんな時間に…?帰られたはずでは」 確か今日診療所を閉める際に鷹野は帰宅すると言っていた。 なにせ誰も残っていないのを確認して自慰行為を行っていたのだから。 入江の顔が赤くなる。 そうだ、自慰行為を見られていたのだ。 いつからかはわからないがあの様子だとしっかり見ていたのだろう。鷹野の顔が見られない。 「入江先生って、随分と素敵な声でいらっしゃるのね」 くすり、と小馬鹿にした様な声で言われ鷹野を見上げると楽しそうに笑っていた。 髪をかきあげる。長い髪がさらさらと流れる様子に思わず見とれる。 見られていた、聞かれていたと言う動揺よりも鷹野の女性らしい仕草に意識がいった 「あんな風に押さえた声も素敵。…興奮しちゃうわ」 笑うように細められていた目が薄く開き、唇が耳まで裂けたかの様に薄く開かれる。 剥き出しの腕に鳥肌が立つのが見ないでも分かった。 どんな口紅を使っているのだろう、舌なめずりをする鷹野の真っ赤な唇を肉厚の舌がなぞる様子は酷く淫猥で下品ですらあった。 ぬめぬめと光る唇を薄く開いてうっそりと笑う。 一歩、また一歩とこちらに歩いてくる。 ヒールがゴム張りの床を鳴らすくぐもった音を入江にはどこか他人事のように感じられた。 目の前に迫っている鷹野の行動がわからない事には対応もできない。 「た、鷹野さんっ」 ベッドの横に立たれ見下ろされると流石に焦る。一体どう言うつもりなのだ。 「あら、まだ分からないのかしら、そんな素敵な格好しておいて」 入江は自分の格好を再確認した。 はだけられた胸元にスカートはめくり上げられ太股までが露出されている。 丸まった下着が足首辺りに絡まっているこの状態では言い訳もできない。 尤も鷹野は随分と前から自分の自慰を見ていたようだから言い訳の余地もないのだろうが。 「もう満足してしまったかしら…まだだったら、私がしてあげても良いのよ」 屈んだ鷹野が耳元でささやくとそこからざわざわとした感覚が広がっていく。 先ほど吐き出したばかりの熱が集まっていくの感じた。 「た、鷹野さん、一体何の話をしてらっしゃるんですか…」 声のふるえは隠せなかった。鷹野が笑うと耳に息がかかり、髪の毛の流れる音が聞こえた。 「あら、そんな事もわからないのかしら、私がしてあげるって言ってるのよ」 耳に熱を感じた。鷹野はベッドに片手をつき入江の耳を犯す。 耳朶にそっと触れられ、柔らかい部分を唇ではまれる。舌でなぞられると体が震える。 邪魔なのか髪の毛をかき上げられる際に触れた爪の感触にまでゾクリとする。 「あっ…鷹野さんやめて下さいっ…」 鷹野の熱い舌が耳の奥深くまで進入してきた。 脳を直接犯される感覚。ぐちゃぐちゃと厭らしい音が鼓膜に響く 背筋に走る悪寒と紙一重の快感。両の手でシーツを掴むが体を起こしているのがやっとだった。 一体何故こんなことに、考えてみても答えは出ない。 ただ、股間がもう濡れて来ている事は確かだ。自分で触りたい。 しかしシーツを掴んでいないと体が崩れ落ちて仕舞いそうだった。 開きっぱなしになっていた口元から唾液がこぼれる。 「もう…やめて下さい…んっ…鷹野さん…っ」 濡れた音をさせて、耳が解放される。 額を当てる様にして見つめられる。 これほどに至近距離で鷹野を見たのは初めてだったが、整った造作を感じるより、 その奇妙な笑い顔に意識がいってしまう。背筋に冷たい物が伝った。 「本当に、やめて欲しいと思ってるのかしら」 綺麗な優しく指が頬から顎をたどり顔を持ち上げられる。 「一人で浅ましく声を上げていたあなたに私は必要なんじゃなくて?」 そう笑った鷹野の熱い舌に唇をなぞられる感触を、どこか他人事のように感じていた。
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圭一は園崎本家に来ていた 魅音の母親から電話がきたからだ。 相変わらずでかい屋敷だ。廊下を歩くだけで緊張する。独特の雰囲気に飲まれそうだった。 そして、魅音の母・茜が待っていた 「良く来たね 今日はちょっと用事があってねぇ」 相変わらず凛とした美しさに独特の雰囲気 そして力強い目をしていた。 思わずドキッとした。 そして部屋に案内され この前の圭一伝説の話題になった。 「圭一君あんたは、大物になるよ。村のみんな そして婆までも味方に付けて沙都子ちゃんを救い出した。 若い者には出来ない芸当だよ。あたしは心底惚れたよ あんたの男気に・・」 圭一は照れながら有り難うございますと言った。さっきから、雰囲気が違う。 茜の目がトロンとして、俺の事を見つめている。何だろ?心臓がバクバクしている。 人妻の独特の色気が圭一を動かさない。 体がぞくぞくする。 音もなく茜が圭一に近付く 指でいやらしく圭一の顔をなぞる。顔を近づけて 「圭一君・・あんたの男気もう一回見せてもらえるかい。うふふ」 圭一はぞくぞく身震いした。どうする?男ならこのままヤるか・・ いや、待てよ・・親父さんは本職だよな。バレたら確実に※される。 でも、お袋さんは誘っている。確実に美味しい どうすればいいんだぁ~ 迷っている圭一をよそに茜は圭一の股間に手を寄せた。 男とは悲しい生物だ 股間が激しく反応する。 「若いねぇビンビンじゃないか。こんなに硬くしておばさん嬉しいねぇ」 理性が崩壊寸前耐えられる状況ではない。最後の理性を振り絞り言った 「おばさん・・ダメです。親父さんにバレたら※されます。 何より魅音にバレたくないです。ですから、止めて下さい。」 「圭一君 魅音が好きなのかい?」 はいっと答えた。本気で好きだから・・ 「圭一君なら良いよ。寧ろ圭一君以外はあり得ないからねぇ。 しかし、あたしの誘いを断る気かい?心配しなくていい。今は楽しまないと」 その頃魅音は家に向かっていた。頭の中は圭一の事を考えていた。 「あぅ・・圭ちゃん この前は格好良かったな 圭ちゃん見ているとドキドキする。」 真っ赤になりながら恋人の顔を思い出していた そして自分の部屋に戻ろうとしたら、茜の部屋から声が漏れた (何だろう?誰か来ているのかな?) 障子を少し開けると驚くべき光景があった。 茜が圭一の股間をしゃぶっている。 (えっ・・何が起きているの?何でお母さんと圭ちゃんが・・? 分からないよ・・) しかし、離れようとしなかった。自分でも驚いた (体が熱い・・・下半身がじゅんってする。 私興奮している・・・ ) 圭一は茜の思うままにされていた。 「うふふ‥若い臭いがたまらないねぇ・・元気で硬くてうちの旦那より大きいじゃないか。」 うわぁ気持ちいい・・これが人妻のフェラなのか。何とも言えない快感が体中に走る! 体が仰け反ったとき見覚えのある顔があった。 (えっ・・みっ魅音?) 魅音と目があった。 「うふふ‥魅音 何見ているんだい?入っておいで。」 魅音は部屋に入ってきた 何がどうなってんだよ。俺は下半身丸出し・・・ 「圭一君のアソコは元気がいいねぇ美味しいよくすくす」 「お母さん何しているの?止めて!圭ちゃんは私のものなの。」 そう言って魅音までもが俺の股間にある逸物をしゃぶっている。 (何なんだこの秘密の世界みたいな光景は? やべっ気持ちよすぎ) 器用に茜は着物を脱いで魅音も制服を脱いだ。そこには有り得ない光景だった。 園崎家次期党首の魅音その母親が裸で俺の目の前で立っている (こんな美味しい状況を見過ごす手は無いな。) 「あたしも圭一君気に入ってね!雛見沢には若い人が居ても ここまで良い若者はいないよ 久々に体が火照って仕方がないよ。」 「お母さん。もーーーー知らないよ?」 俺は魅音を抱き寄せキスをした。茜は俺の股間を舐めている (親子してエロいなくっくっく ) 魅音の胸を弄る兎に角弄る 乳首は綺麗なピンク色 何より大きいのに形が崩れていない。十分な重さと柔らかさ揉むだけで気持ちいい そして敏感すぐ喘ぎ声になる。 「あっ・・・んっはぁん・・ひんっ・・そこっ・・ひゃんあん・・いやっはっ・・やん あん・・圭ちゃん気持ちいいよーーーー」 茜のフェラも激しくなる 俺は対抗するように左手で茜のアソコを愛撫する 既にびちょびちょだった (凄いなこの濡れ方)手を離すと指先から汁が垂れていた 右手で魅音のアソコに指を入れると同じように濡れていた。 グチュグチュって音しながら中をかき混ぜた! 茜は圭一を押し倒した 「魅音 先に頂くよ!はぁん・・・大きくて硬くて太い・・・」 うぉ何なんだこの中は魅音と違う!締め付けが凄い!締め付けながら上下運動する。 (やばいぞイきそうだ) 「どうだい?圭一君これが大人のSEXだよ。んっはぁん・・・中に出して良いからねぇ」 凄すぎだ・・・我慢出来なそうな魅音が俺の顔の上に股間を乗せた 股間を舐めてあげながら腰を振った すぐに、絶頂感が襲った 俺は折角だから茜の中に思い切り出したよ。 茜もいったらしい ビクンってなった。 「圭ちゃん・・・私も我慢できないよぉー あぅ・・・入れちゃうねはぁーーーーーーーー」 (おいおい連続ですか? 休む無しですか? 俺大丈夫か? この際やってやるそれが男ならとことんやってやる) 「魅音気持ち良いか?胸弱いもんな!くっくっくっ」 乳首を甘噛みしつつ舐め回して弄った 騎乗位の形から座位 そして正常位の形に持って行った 魅音は何回イったか分からないぐらい喘ぎ声を出してるし。 「んっあっはぁん・・・もっとかき混ぜて圭ちゃーーーん」 (魅音可愛すぎるぞ! 俺も限界だ うっ) 中に分身を放出した。 茜と魅音はあはあ言いながら満足顔だった 後ろの方で殺気を感じた ぶしっ あれっ目の前が真っ暗になっていく。俺どうしたんだ? 振り向いたら・・・レナが・・・鬼みたいな顔で笑っていた 何で? END
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2008/01/05(土)投稿 あの日、心の内に秘めていた俺の肉欲が現実になった。きっかけは何気ない日常の一コマからだった。 「……なあ魅音、俺の履き古しのパンツなんか盗んで……一体何をしようとしてたんだよ……」 俺の目の前で顔を紅潮させている魅音に迫った。洗濯かごに入れて置いた俺のパンツを片手に握り締めている姿を見て俺は若干の失望を覚える。 「あ、あの……そのこれは……違うの……」 その大きい瞳を左右に大きく泳がせながら魅音はつぶやくように答えた。 「トイレ借りたときにさ、洗濯かごの中見たらさ……」 「……それで」 「け、圭ちゃんのがあって……その、いいにおいだったからさ……あの、つい……」 しどろもどろの魅音の告白に衝撃が走らずにはいられなかった。こっそり俺のパンツを盗んで、慰み物にしようとしてた訳なのか…… 「ごめんなさい!!圭ちゃん……わ、私……魔が差したというか……」 明らかに動揺の激しい魅音を軽蔑の眼差しで見つめる。いつも俺に見せ付けてくる勝気な性分はすっかり影を潜めている。もじもじと体を揺り動かし、涙目で謝罪をし続ける魅音が俺の嗜虐心をくすぐった。俺の底に眠っていた、人様には言えない変態的な欲求がじわじわと体を支配していった。 「……いいぜ魅音。誰だって間違いは起こしちまうからな……このことは誰にも口外しない」 魅音の表情が和らいでいくのを一瞥した後、俺は付け加えた。 「ただし、一つ条件がある」 多分それを伝えたときの俺は口角を醜く釣りあげ、ほくそ笑んでいたはずだ。魅音の表情がみるみると困惑したものとなっていく。 ……やっぱりお前っていい顔するよな……魅音。 「……圭ちゃん、これって……」 魅音は目の前に置かれた器具を目を丸くして凝視している。 透明のピストン式のガラス管、グリセリン液の入った茶色の薬瓶、精製水入りのポット、ビニールシート。 まあ驚いてしまうのも無理はない。 「もう勘付いてるかも知れねえが……」 「もしかして、さっき言ってた条件って……」 恐る恐る言葉をつむいだ魅音に対して、胸の高鳴りを抑えながら俺は答えた。 「……ああ、 これからお前のアナルを開発させてもらう……それが条件だ」 アナルという言葉に身体を震わせた魅音は少しの間、蝋人形のように固まっていた。 「……そんな……圭ちゃん、嘘でしょ……?」 「いや、俺は本気だぜ……」 「…………」 急に黙りこくる魅音。俺たちの間を沈黙が支配する。 意を決した俺は沈黙を破った。 「……いいんだぜ魅音……今日の魅音の行為をバラしちまっても。……あいつらどう思うだろうなあ……」 はっと魅音が顔を上げるのがわかる。 「まさか、女が男の下着を盗むなんて前代未聞だよなあ。しかもそれが、わが部の部長、クラスの委員長だもんな……それに……」 「やめてよ!!」 俺の話は途中で折られた。そして魅音は俺から目を逸らしゆっくりと言葉を続けた。 「……わかった。圭ちゃんの……その条件呑むよ……元凶は私にもあるし……」 落ちたのか? これから俺は魅音のアナルを味わうことができる……のか? 魅音の、仲間に醜態を晒したくはない手前、この尋常でない取引が結びついたのかもしれない。 いや、もしかしたら魅音もアナルプレイに興味を持っていたのかもしれない。今となっては、それを知る術は無い。 まるで覚めない夢を見ているようだった。肉欲にまみれた享楽はこうして俺の手中に転がり込んできたのだ。 「じゃあ、魅音ここに横になってくれ。うん、そうだ。体をこう、横にして……」 俺に言われたとおりに魅音は側臥位に付した。魅音の頬は淡く紅色に上気している。 「圭ちゃん、その……こんなことされるの初めてだから……」 「ああ、俺の言うとおりにしてくれ。そうすれば何も痛い思いをすることなんてないからな」 なるべく魅音を刺激させないように言葉を選んだ。ここまで来て逃がすわけには行かないのだ…… 「それじゃあ魅音、下着を脱いでくれ」 俺の言葉に促されて、魅音は自分の両手をその長めのスカートの中に伸ばした。手を差し込んだ形にスカートの生地が膨れ上がり、徐々にそれが足元に向かっていく。 「…………!」 魅音のほっそりとした指に引っかかった薄緑色の下着が顔を出した。しわくちゃになった魅音のパンツと恥らいながら脱衣する姿が俺にの下半身に火をつけていく。 魅音の下着が取り払われた。よって魅音のスカートの中は何もつけていない状態になる。 「よし、じゃあ……」 魅音のスカートに手をかけた。震える指先が魅音の陰部をさらけ出していく。 魅音の吐息が漏れるのを聞く。 ──こ、これが魅音の……! 露になった魅音の蕾とその2cmほど上に存在する桃色の裂け目。少しくすんだ色と桃色のそれを俺は脳の中に焼き付けた。 息を呑んで魅音の愛らしい蕾を視姦する。 「圭ちゃん……あまり見ないで……」 「お、あ……ああ、悪い」 恥らう魅音に正気に戻された俺は用意してあったローションを指に塗りこめた。すっと魅音のひだに触れた。心臓が火をくべられた様に激しく脈打つ。 魅音の半身がぴくりと動いた。 「リラックスしろ……魅音」 心の中では平静を保とうとするが、俺のペニスは激しく脈打っていた。魅音の肛口のひだから温かい体温が俺の指先から感じられた。そのまま指をくわえ込ませた。 「……ひあ……圭ちゃん……指が」 俺の人差し指を魅音のくすんだアナルに出し入れする。ぬぷりと腸液とローションが混じり合う音が辺りを支配する。 「……大丈夫だ。よくほぐしておかないと注射口が入らねえからな」 もっともらしい言い訳を立て、魅音のアナルを出来るだけ長く感じようと努めた。 数十秒ほどそうしていたが、これ以上やると魅音を不安がらせてしまう。そう感じた俺はゆっくりと指を引き抜いた。 「ん……」 照り輝く指を見つめる。魅音にバレ無い様に恐る恐るそのにおいを嗅いだ。 ───う……あ。こ、これ。 魅音の中のにおいを初めて嗅いだ。形容のできない甘美な香りが俺の鼻腔を突き抜けて言った。 そのにおいに酔いながら、俺はグリセリン水溶液に満たされたガラス管を手に取った。注射口を魅音のぬらぬらした光沢を放つ肛口にゆっくりと差し入れた。静かにシリンダーを加圧する。 「う……ああ……」 恐らく初めて味わう肛口内への異物感に困惑と羞恥が感じられているのだろう。その聞いた事の無い声と湧き上がる魅音への征服感が俺の勃起したペニスを痛いほど押し上げてくる。 「力を抜いて、リラックスしてろ……」 透明のシリンダーを徐々に押し込んでいく。目をつむり必死に異物感に耐えている魅音は眉間に皴を寄せ苦悶の表情を浮かべている。 ───ああ、いいぜ魅音。その苦しそうな顔、もっと見せてくれよ…… シリンダーを最後まで押し切った。 ───500ミリリットルは初っ端から少し多かったか…… 牛乳瓶二本分ぐらいを飲み込んだ魅音のアナルはひくひくと艶めかしく蠢いている。こぼれた薬液が魅音の太ももをつうっと伝っていった。 「……お、終わったの? 圭ちゃん……」 「ああ、これから薬液を充分に行き渡らせるため、少しこのままの姿勢でいてもらうぞ……魅音」 薄桃色をしたほっぺを携えた魅音は、こくりとうなずいた。 「……う……う、んん……」 魅音が声を漏らし始めた。薬液が隅々まで行き渡り、腸内の蠕動運動が著しくなったのだろう。 「圭ちゃん……あの……はぁ、はぁ……苦しい……の」 「もう少し我慢しろ……そうしないと薬液が中に残っちまう」 呼吸が荒くなり始めた魅音はしきりに俺を上目遣いで見つめてきた。 ───そんな目で見ないでくれよ……魅音……気が遠く……なっちまうだろ…… 整えられた両の眉尻を少しハの字に曲げ排泄欲を必死に耐えている魅音。その荒々しい呼吸音と苦しそうな顔が俺の嗜虐心を締め上げてくるのだ。 「そうだな、あと四十秒……我慢しような……魅音」 「よん……じゅう……」 ボソリとつぶやいた魅音は自らのお腹を両手で摩りながら、そのときを待つ。 「はぁ……はぁ……」 苦しそうに息を吐く魅音がそこに横たわっていた。額にはうっすらと汗の粒が浮かんでいる。 「よん……じゅう経ったよ……」 「よし、じゃあ……」 俺は限界に近い魅音の尻の下にビニールシートを敷いてやる。 「もし……かして、はぁ、んぁ……こ、ここで?」 「そうだぜ、魅音。その様子じゃあ下のトイレまでもちそうにないからな……」 何か言いたげに俺を一瞥した魅音だったが、 「……う……ぅんん!!……ああ……」 魅音の押し殺した声と共にくぐもった腹の音がはっきりと聞き取れた。 「さあ、魅音。もう……我慢しなくてもいいんだぜ」 決壊しそうなくすんだアナルをすぼませながら、魅音は言葉を紡いだ。 「い、いいの……? 出して……いいの?」 ぐっとお腹に手をあてている魅音に最後の言葉をかけてやる。 「いっぱい、出して……いいんだぜ……」 「んんん!あ……っ……あ……」 魅音の肛口がひときわ高く隆起した。 「んん……はぁぁぁ……」 俺の目の前で魅音の奔流が垂れ流されていく。いつも勝気な親友の尻穴から下劣な破裂音と粘度のある水音が響いてきた。俺の耳はその音に犯されていく。恍惚とした笑みを貼り付けた俺が魅音の醜態を見守る。俺の脈打つペニスはまるで怒髪天を貫くかのような勢いでそそり立っていた。 それからというもの、俺は魅音のアナルを徐々に開発していった。初めの頃は指を出し入れするもためらっていた魅音だったが、今ではあらゆるプレイを尻穴でできるようになった。俺の童貞は魅音に捧げた。もちろん魅音は今でも処女のままだ。処女なのにアナルを犯すという世の理を離れた背徳的な行為がさらに俺をエスカレートさせた。罰ゲーム用の衣装を着せて犯したり、浣腸液を仕込んだまま、登下校させたりもした。カメラを使ってハメ撮りしたこともある。顔を苦痛に歪めながら苦しみを忍ぶ魅音の表情を俺は求めるようになったのだ。 しかしだんだんとエスカレートする行為に魅音は涙を浮かべて静止を求めることもあった。そのときは俺に対して行った魅音の所業を暴露してやると脅してやった。 「お前が俺の下着を盗もうとしたこと……あのことをみんなにバラしてもいいんだぜ。お前のハメ撮りの写真付きでなぁ……」 その一言だけで魅音を押し殺しことができた。そのまま涙目の魅音を犯すのも一興だった。 俺の欲望を実現させてくれる魅音をどうして手放すことができようか……魅音の肛口にあったほくろの形やアナルの味を鮮明に思い出すことができるところまで来ているのだ。このまま魅音を貪り続けてアナルでしか感じることのできない女にしてやる…… ふしだらな享楽を貪り続けていたある一日だった。俺の家にとある来訪者が訪れて来る。 「こんにちは、圭ちゃん」 「おう……詩音か。いきなりどうしたんだよ」 魅音の妹である詩音がやってきたのだ。 こいつは魅音の双子の妹の園崎詩音。魅音とは瓜二つの存在ではあるが言葉遣いや性格は全く似ても似つかない。都会暮らしの詩音は少し垢抜けているといってもいいくらいだ。 ───詩音を犯したらどうなるんだろうか。 姉とは違い詩音は激しい感情の持ち主だ。その大きな瞳を激情に染めて俺を罵倒してくるのだろうか。激しい言葉に耳を犯されながら詩音のアナルを犯す。そんな妄想が俺の耳の中を廻っていった。 「まあ、あがれよ、詩音」 「ええ、そのつもりです」 普段とは何か様子が違っていた。いつも見せる笑顔がこの詩音にはなかった。一向に表情を崩さない詩音に不信感を募らせながら、俺は部屋に招いた。 「それでなんだよ、用事って」 改めて俺は用件を聞いた。真剣な眼差しで俺を見つめていた詩音は言った。 「単刀直入に言います。これ以上お姉に手を出すのはやめてください」 「……どういうことだ」 「とぼけても無駄です。圭ちゃんがお姉を食い物にしていること……全てお姉から打ち明けられました」 ───なるほどな……あいつ話したのか…… 詩音によると魅音は全てをさらけ出したらしい。あいつがそこまで、しかも実の妹に打ち明けるとは思っても見なかった。写真まで撮っていたのに。それを包み隠さずに詩音に話したのか? あの気の弱い魅音が……? 「……お姉は泣いていました。泣いて私にすがり付いてきて……」 詩音がぐっと俺を睨み付けた。 「あんな悲しそうなお姉……今まで見たこと……なかった……!」 いたたまれなくなった俺は怒りに染まる詩音から目を逸らした。心を落ち着かせて考えを整理する。先ほどから考えていたことだ。 魅音が俺に対して行った所業、その代価として魅音を犯し続けたこと。写真も撮ってある。 そのようなことを他人にしかも実の妹に話すか? あいつは園崎の頭首になる人間だ。それなのにそんなことを暴露したらそれこそ末代までの恥になる。村の信用とやらも失墜するはずだ。 つまりだ。魅音は誰にも話せるはずは無い。だから今、俺の目の前にいる奴は詩音のフリをした魅音だと思っている。詩音のフリをして俺を脅しに来たのだ。 一旦席を立ち、俺は言葉を紡いだ。 「しかし詩音、あいつは俺の下着を盗もうとしたんだぜ……」 そのまま、自分の机の前に立つ。 「それはわかっています。確かにお姉に非はあります。しかし、それに見合うだけの償いは行ってきたでしょう?」 詩音の語りを聞きながら俺は引き出しを引いた。 「だから、これ以上お姉にちょっかいを出すのはやめてください」 俺は机に常駐してあったイチジク型の携帯浣腸器を数個と罰ゲーム用に使っていた銀色に輝く手錠を一組忍ばせた。 「そうか……確かに筋は通ってるよな……詩音」 ポケットにそれらを忍ばせた後に再び詩音に向き合った。 「なあ、詩音。俺がこのまま魅音に手を出し続けたら、どうなると思う?」 「死ぬでしょうね」 間髪いれずに詩音は言い放った。まるで家畜を見るかのような目で俺を見据えている。一時の逡巡のあとに詩音は立ち上がりながら答えた。 「圭ちゃん。私としてもお姉としてもできるだけ穏便に済ませたいと考えています。だからこれ以上の厄介ごとを起こさないで」 そのまま踵を返す詩音。 「……えっ!」 俺は詩音の両足を両腕で抱くように掴んだ。 「なあ、詩音。それ本当に魅音から聞いたのかよ……」 「な、何を……言って」 むちっとした詩音の制服のスカートから突き出た太ももに指を沿わせる。 「あいつ、写真まで取られてたんだぜ。そんな中であいつがお前に打ち明けるわけねえだろ……」 核心を突く。 「お前、魅音だろ……」 「バ、バカな事を言わないでください」 思ったとおりの反応を見せる詩音に対し、俺は実力行使を決意する。 「なら調べさせてもらうぜ……お前の体をな……」 そのまま足を抱いたまま、詩音の重心をずらした。わずかな悲鳴と共に詩音は床に付した。 そのまま、手錠を取り出し後ろ手にはめる。うつ伏せに拘束された詩音を俺は時間をかけて視姦した。 「……圭ちゃん、ふざけているのならやめてください。……後がひどいことになりますよ」 伏しているのにもかかわらず、詩音は眼光鋭く睨みを利かせた。 「いつもより強気じゃあねえか……でもなあ……」 うつ伏せになっている詩音の制服のスカートをぱっとめくる。純白の下着に包まれた張りのある双丘が顔を出した。そのまま下着をめくり上げ肛口を露出させた。 ───ほら、言った通りじゃあねえか…… この詩音には魅音と同じ位置にほくろがあった。特徴的な形だったのでよく憶えている。 ほくそ笑んだ俺は空気にさらされている詩音のアナルに口をつけた。 「うぁ!! ……あんた、何をやって……」 ───なんだよ魅音……もう慣れっこだろ。このぐらい……それに 「味もあいつと同じ。やっぱりお前、魅音だろ。詩音のフリをしたな……」 やれやれ、こんなことをしてまで俺との仲を切りたかったのか。こいつは。 「お仕置きだな……魅音」 ポケットから携帯用の浣腸器を取り出す。魅音はその容器が何を意味するか気が付いたみたいで、拘束された両手と自由の利く両足を使って抵抗し始めた。 「……手を……離しなさいよ」 「うるせえなあ、お前が初めに突っかかってきたんだろうがよ……っと」 そのまま俺は魅音の両膝の辺りに腰を下ろした。これで動きは封じた。魅音の下着を下ろし、露出した双丘をぐっと外側に押し広げる。見慣れた色と形をした蕾が露になる。俺の唾液によってぬらっとした光沢を引き放っている。 「いくぜ」 そのまま浣腸器を魅音の中に差し込む。指に力を入れて中の溶液を注入していく。 「……や、やめ……く……うあ」 空になった容器を放り投げ新しいものに持ち替える。溶液を注入していくにつれて、魅音はくぐもった艶かしい声を上げた。全てを入れ終わった後に俺は魅音の様子を見る。顔を伺う事は出来ないが腹を手で押さえ、肛口はきゅっときつく結んでいる。今回はえらく効きが良いらしい。 「まあ、普通ならここで出させてやるんだけどな……」 既に息が荒くなり始めていた魅音を見下ろしながら俺はベルトを緩めた。 「はぁ……はぁ、やめ……ろ!」 そそり立ったペニスを魅音のアナルに押し当てた。 「このまま俺のを入れてやるよ……魅音」 ローションをたっぷり垂らした後に俺は一気に中に入れた。 「あう……ぐ!! 痛!うう、ああ……」 「う、おお……今日はやたらと締め付けてくるじゃあねえか……」 いつも魅音のアナルを犯していたが、このときは尋常でないほどの締め付けを感じた。まるで、俺のペニスが喰いちぎられそうなほどであった。もう慣れっこのはずの魅音も歯を食いしばりその苦しみ……いや快楽に耐えているのだ。それもそうだろう。強烈な排泄感と共に挿入されてしまっているのだから。 「動くぜ……魅音」 「くぁ……くっ」 ペニスの先端に魅音の生ぬるい腸液と内容物が感じられた。いつもよりきつい腸壁の蠢きが俺のペニスを襲った。動きに合わせて粘膜が擦れ合う音が部屋に響く。 「うおお、いいぜ……魅音」 俺の下で苦痛に耐えている魅音。その格好は制服に身を包み髪をストレートに下ろしている。まるで詩音だ。 「へへっ、魅音その格好似合ってるじゃねえか。わざわざ俺のために詩音から借りてきてくれたのか?」 返事をしない魅音はただ深く息を吸っているだけだった。 「お前の妹も一度犯してみたかったんだぜ……でも簡単なことだったんだよ。お前がこの格好をしてくれたら良かったんだ……」 腰の動きを加速させる。まるで詩音を犯しているみたいですげえ気持ちいい。 「……やる…………はぁ……ろす……!」 詩音が何かをつぶやいた。腰を振りつつ俺は聞き耳を立てた。 「殺……す……殺して……やる……!」 この期に及んで強がりを見せる魅音だったが、その声はまるで本当に詩音から発せられたものではないかと錯覚した。 「すっげえ、押し返してくるぜ魅音……出そうとしても、出せねえだろ……俺が蓋しちゃってるもんなあ……」 「う……くあ」 くぐもった腹の音が鳴った。魅音にも限界が近づいているのだろう。先ほどの咬みつくような声と間の抜けた腹の音のギャップが俺の射精欲をプッシュした。 「くっ! そろそろ出すぞ、魅音」 そのまま腰を突き立てて魅音の中に全てを注ぎこんだ。射精に合わせて体を振るわせた魅音に俺は声をかけた。 「良かったぜ、魅音……おまえもそろそろ出さねえとな……」 ずっとペニスを引き抜いていく。 「……う、ああ……あ、あ」 長い間魅音に蓋をしていた俺のペニスを引き抜いた。ぽっかりと魅音のアナルは俺のペニスの形にぱっくりと口を開けている。 「さあ、出しちまいな……」 「あ……ああ!!」 魅音の全てがその肛口から噴出していく。水気をはらんだ破裂音が漏れなく付いてきた。白色と透明と茶色の交じり合った色彩が俺の瞳を染めた。もう心地よいと思ってしまう魅音の臭気が俺の鼻腔から脳へと突き抜けていった。 結局、あの後魅音は一切口を利かずに出て行ってしまった。 ───やれやれあの後の処理、大変だったんだぜ…… まあそれに見合うだけの対価は十分いただいたのだが。 自分の部屋で射精の余韻に浸っていた俺にまたもや客が訪れた。 「こんにちは、圭一君」 「おう……レナか。どうしたんだよ」 こいつは竜宮レナ。俺と同い年で仲間思いの優しい奴だ。去年この雛見沢に引っ越してきたらしい。 ───レナを犯したらどうなるんだろうか ときおり見せるかぁいいモードとやらに入って、俺のペニスにはぅはぅとよがり狂うのだろうか。 それとも激情に任せて、俺に汚い言葉を吹っかけてくるのだろうか…… 「……どうしたの、圭一君?」 「あ、ああ……悪りぃ悪ぃ……」 俺の様子を見てくすりと微笑んだレナは言葉を再開した。 「あのね、これ。今日学校で集まりがあってね……」 レナが小さな新聞紙にタッパーを差し出した。そして学校でおはぎを作っていたことを俺に伝えてきた。 「おお、おすそ分けか。サンキュ。」 「ふふ、魅ぃちゃんたちと一生懸命作ったんだよ」 ──────え? 「……魅音もか?」 「そうだよ、圭一君」 俺の中で黒いもやが渦巻いていく。 ───嘘だろ……だって魅音はさっきまで…… 「レ、ナ。このおはぎどのくらい前に作ったんだよ」 「え、っと2,30分ぐらい前かな」 ───馬鹿な。30分前といえば俺が魅音を犯していたじゃないか。 こみ上げてくる不安が徐々に実を結んでいく。 「あのさ、レナ。本当にそれ魅音と作ったのかよ……」 怪訝な表情を浮かべたレナは答えた。 「どうしちゃったの……確かに魅ぃちゃんと作ったよ。知恵先生と校長先生も一緒だったから、気になるなら後で聞いてみたらいいよ」 俺は確かに魅音を犯していた。でもそのとき魅音は別の場所にいた。じゃあ俺が犯していたのは一体誰なんだよ? まさか本当に詩音だったのか……? 俺の家に来ていたのは。でもきちんと確認していたではないか。あの魅音のほくろの位置、そして味も。 ……もしかしたら。どっちとも同じ位置にほくろがあったというのか? 有り得なくは無い。ほくろの位置が似通っている奴なんて大勢いるだろう。それがただ姉妹だっただけで。 ……そうだ! 詩音の護身用のスタンガンはどうした? 詩音なら俺であろうと容赦なく使って来たはずだ。でも……詩音はあの時携帯していなかっただけでは? ただ俺に忠告に来ただけだ。武器のようなものは必要なかった……もしくは故障中だったということも考えられる。 つまり俺は魅音か詩音かの明確な区別が付かないまま、ことに及んでしまったのだ。 ───本当に俺は詩音を犯してしまったのか……? がくがくとタッパーを持つ手が震えた。 「どうしたの、圭一君……顔色、悪いよ……」 レナの言葉など耳に入らなかった。ただあの時の詩音との会話が俺の頭の中で反芻されていたから。 ───なあ、詩音。俺がこのまま魅音に手を出し続けたら、どうなると思う?─── ───死ぬでしょうね─── fin